世界野球
日本が見せたものは
誇張でなく面白い試合だった。初代世界王座を争った野球の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝は、日本がキューバを突き放して勝った。
「王ジャパン」と呼ばれても、やはり選手が主役である。両チームの選手ともにミスをしたら好守好打で取り返す、そんな気迫のプレーを随所に見せた。
キューバは野球が国技で、五輪をはじめとする世界大会で幾度も優勝している。しかし、今大会に限れば日本のチーム力が上だった。
対戦相手が異なるため単純に比べることはできないが、準決勝まで打率、防御率といったほぼすべてのデータで日本がよい数字を出していた。中でも盗塁数は日本がキューバの4倍、投手が与えた四死球も日本はキューバの3分の1である。いかに攻守のリズムとスピードがあったかを物語っている。
それが見る者をくぎ付けにさせた大きな理由だろう。それはまた、大リーグのスーパースターをそろえながら2次リーグで敗退した野球の本場米国への一つの提示でもある。
同時に日本のプロ野球へも姿を示したのではないか。野球、スポーツの面白さとは何か、見せるスポーツとはこういうものだ、との投げかけである。その方向性は低迷する日本の球界が進むべき道だと考える。
決勝は、公正な判定も試合の妙味を引き出した。2次リーグの日本—米国、メキシコ—米国の試合での明らかに米国有利の判定が、米国のファンにも失望感を与えたのとは際立って見えた。
審判団の構成の問題、非公開の組み合わせ抽選が「米国の、米国による、米国のための大会」の様相を浮かび上がらせていたが、それらは課題を残したというより、基本の欠如と言える。
大会運営でも米国の強引な主導が指摘された。収益配分は大リーグと選手会で計35%に対して、日本など参加国の組織には10%に満たない額にとどまっている。
米国内では大会の注目度が当初から低く、運営で今回赤字なら次回開催はないとの見方も出ている。しかし、それでは勝手すぎる。
スポーツの魅力を十分理解し、それを商品展開につなげるならスポンサーは付くだろう。その点、日本—キューバ戦には気づかされたものが多いはずだ。本場米国がチーム力と運営を立て直し、次回WBCを見せてくれるよう期待する。