こんばんは。劇団irodoriの作演の秋山です。


僕にとって、人生最大の敵は、もの忘れという癖でしょう。
こいつのせいで、幼少期から周りの人に迷惑をかけてきました。
小学校のときは、ほぼ毎日忘れ物をして、おばあちゃんに車を出してもらっていました。

21歳になっても、その悪癖は完治の兆しを見せず、むしろ悪化しているんじゃないかと思います。
未だに、稽古の時間や場所、友達との約束、バイトのシフトなど、頻繁にポカしています。
結構、重大なことも忘れていて、劇団員に伝えるべきことも、見落としてばかりです。
自分でも気をつけているのかいないのか…。
当然、劇団員に怒られます。これは、僕が悪いんですから、当たり前のことです。
でも、辛いのは、自分で自分に悲しくなることです。ポカに気づいて、落ち込んでいます。
それなら、ポカしなければ良いのですが、やはり、人生最大の敵ですから、中々、手強いです。こいつとは、一生戦うことになります。

そんなもの忘れの激しい僕ですが、案外、覚えていることはいっぱいあります。
楽しい記憶、悲しい記憶。
家族との思い出、友達との思い出。

記憶というのは、不思議だと思います。
もうこの世に存在しないものを、あたかも存在させることができます。
覚えていれば、存在することになります。
逆に、忘れてしまえば、もうどこにもありません。

僕よく、小学校、中学校、高校時代の楽しかったこと、嬉しかったことを思い出して、ひとり楽しい心地に浸っています。
「今を生きろ」とか、「過去にすがるな」とか、前のめりで真面目で実直な意見を多く耳にしますが、僕は、過去だって、存在していると思います。だから、過去にすがるのは、悪いことじゃないんじゃないか、と思っています。
人と人が手を取り合うことは、なかなか難しいです。
いつも隣に誰かがいて、肩を抱いてくれたら、どんなに安心だろうかと思います。
現実には、孤独は常に襲ってきます。
このご時世、そんなことも多いのではないのでしょうか。

僕も、孤独を感じることがあります。
自分の将来が恐ろしくて仕方ない時があります。
今の自分を生かしているのは、過去に自分を生かしてくれた人や言葉があるからです。
未来が怖いときは、過去に自分を生かした力に頼ります。
とびきり嬉しかったことや、とびきりやる気の出た言葉、大切な友達のことを考えます。

今もいつか過去になります。
フェスの稽古もいつか、遠い記憶になります。
きっと、未来の僕は、今回の舞台を思い出したとき、稽古場を思い出したとき、力が湧いてくるのだと思います。
演劇に、周りの人に生かされている自分を思い出して、グッと堪えられるはずです。

いつか今が過去になった、未来にしてみれば一瞬の、この公演は、たしかに今、僕の原動力として、僕を突き動かしています。

それでは、劇団irodoriでした。