<太極拳文化について>

太極拳は中国武術の項目の中でも多くの人々に好まれる拳術の一つです。
まず“太極”についてですが、これは中国の古代哲学の易経「周易・系辞」の易有太極、是生両儀・・と続く思想が生かされています。

 


その意味は陰と陽に分かれたエネルギーが互いに補い合い、その力が「全ての生きとし、生けるものの万物」を生み出す本源としています。その大きな力を“太極”と呼び、この考え方を全てに応用しています。

 

 


「太極拳」の名称は中国、清の時代、乾隆年間(1736年~1796年)

山西省の人物である王宗岳の著書「太極拳論」があり、その「太極拳」の名を用いて多くの人々が普及させて太極拳は世に広まりました。

太極拳の成立についてはこの説以外にも「ルーツは武当山・道教にあり」ともあり、そして多くの流派があり、主要な流派は陳式・楊式・武式・呉式・孫式などのスタイルが編み出されました。

 


1.陳氏太極拳

「陳王廷 1600年~1680年」
各派の太極拳の源流であり、河南省陳家溝の陳一族の間に伝えられ、剛柔の要素を含み動作の全てに螺旋運動が行われます。
陳式太極拳の動作特徴は内在意識・運気活動である。


これは強調意識の主導の下で全身の螺旋運動を発し纏めていく技法を備えています。頭頂を緩め、全身五肢がほどよくリラックスし螺旋した力が脊髄・脊椎を移動し拳脚に力を到達させます。そのため陳氏太極拳の技はゆっくりであり、時に素早く、力は柔らかく、時に力強くなります。ゆえに快慢、剛柔、開合、曲直のように相反し、相連不断、一気呵成です。

2.楊氏太極拳

「楊露禅 1799年~1872年」
河北省の楊露禅が陳長興より、陳式太極拳を学び改変したスタイル。
現在は三代:楊澄甫の編み出した柔らかな技能に重点を置かれ、養生効果があります。楊式太極拳の動作の特徴は姿勢は伸びやかでゆっくりと緩慢なリズムで繋がっています。ゆえに十要:虚霊頂勁、含胸抜背、松腰、分虚実、用意不用力、上下相随、内外相合、相連不断、動中求静。

3.呉式太極拳

「全 祐 1834年~1902年」
楊式太極拳の創始者の子、楊班候の生徒である全祐が創出。 養子に迎えた、2代目の呉鑑泉が上海の精武体育会の教師となり広めました。

4.武式太極拳

「武禹嚢 1812年~1880年」、「郝為真 1849年~1920年」
陳式太極拳を学んだ武禹嚢が創出。その後、郝為真が普及させた小架式の太極拳を郝式太極拳という。

5.孫氏太極拳

「孫禄堂 1861年~1933年」
赫式太極拳を学んだ孫禄堂が形意拳、八卦掌を体得し3つの要素を取り込んで1つのスタイルにしたものが孫式太極拳です。

6、和式太極拳

和兆元が陳清萍に学び創始した。陳氏太極拳と異なり、発勁に激しい動作を伴わず、陳氏太極拳の一派と見なされてきたが、近年、代表的伝統太極拳として認定されました。

7,龍身蛇形太極拳

 

「瞿栄良 1964年~       」


龍身蛇形太極拳は2013年に上海市浦東区に伝わる龍身蛇形太極拳が上海市非物質文化遺産として登録されました。

 

 

 

 

 


龍身蛇形太極拳技法の流伝は初代楊式太極拳創始の楊露禅から2代目楊班候の内在意識から来る身体操法を重視した楊氏太極拳小架式を学んだ満州族の全祐の学んだ太極拳の技法が、養子に呉監泉を迎え受け継ぎ呉式太極拳が生まれました。

呉監泉と同じく全祐に学んだ老架式太極拳の技法が同世代の上海市浦東地区の常遠亭に受け継がれ、常遠亭、その2代目常雲傑と伝承され、その技法は大架式に変化し、龍形太極拳と称されるようになりました。

そしてその龍形太極拳の馬殿臣から瞿荣良へ伝承され、上海市武術協会の重鎮、王培锟老師、冯如龍老師との連携での総編を経て、今日の基本架、軟柔架、勁架となる龍身蛇形太極拳を創始しました。

上海市人民政府は、こうしたそれまでの太極拳活動に「古くある伝統文化から、新時代文化へ」温故知新を重要視している上海市特有の文化精神を持つ体育運動として2013年に上海市浦東新区を代表する非物質文化遺産として登録しました。

そして2015年には新しくとも、伝統歴史文化を継承する上海市の「太極拳」として認定されました。

それぞれの太極拳は技の力の用い方や風格の面で雰囲気は異なりますが、動作の基本的な技術は共通しています。 特徴としてこれらの太極拳は、気持ちは穏やかな中に集中力を高め、姿勢は真直ぐでゆるやかさがあり、胸と背中には無用な力は入れずにおきながら腰周りはしっかりとしています。 足技には応用が効き、肩の力は抜きながらゆるやかに動かし、肘にはスナップをきかせ、指先まで技の意識を届かせる、といったことをめざします。

これらがうまくまとまると、”意”「こうしようとする動きへの思い」”気”「呼吸法、呼気・吸気の力、内側から充実する気持ち、気分」

そして”体”「ボディーコントロール」この4つが互いに協調したものが太極拳の特徴です

中華人民共和国になってから、太極拳をもっと多くの国民にわかりやすく簡単にできるように国家体育運動委員会にはたらきかけ、各種ある多くの太極拳運動を編集しまとめました。 この「套路(型)」が比較的に日本でも普及している「簡化24式・48式・88式太極拳」などです。

そして更に「太極拳競技套路」を創り、42式総合太極拳、陳・楊・呉・孫式の型を創りました。 この近年では中国武術協会は更に簡単な8、16、32式太極拳を加えて、武術段位制度を始めました。2013年からは、新しい国際段位制度も始まりました。

太極拳という運動の素晴らしいところは、中国大陸が育んだおおらかな発想、豊富で独特な味わいに歴史ある深奥な哲学が配合することで、人々の心と身体に良好な作用をもたらします。 今やこういった運動は世界中に広まり、2020年12月に、ユネスコ世界文化遺産に認定登録され、更に多くの人々にも喜ばれ、愛されるようになり健康増進に役立ち大きな発展が期待されています。