恩師 徐文忠 師爺と共に 1985年 この時、徐老師は75歳

徐文忠老師




朱多絹 老師と共に 1985年 上海体育学院にて

朱多絹老師

楊承冰 老師 1986年 

楊承冰老師

今年は中国大陸との往来を始めて30周年という年で、自分にとって記念すべき年です。

ある意味では時が過ぎてみると、「この年までに」やりたかったこと、知りたかったこと、学びたかったことを「やり遂げた」そんな感覚を実感しています。

1985年に初めて上海の地へ降り立ち、印象的だったのは中国の「活気」でした。

偉大なる伝統武術家、徐文忠老師の指導を受け、

上海体育学院で朱多絹老師に基礎や基本の詳細を学び、翌年に安徽省武術隊で楊承冰老師に学びました。

大先輩の兄弟子の賈平さんとの知遇を得て、今でも交流が続く安徽省武術ファミリーとの縁を感じます。

新年が始まり、私にとって「今まで」と「これから」は、随分と感覚が変わった気がしています。

そして先日の鎌倉と江ノ島訪問で得た、伝統日本人として強く生き抜くために必要な精神の重要性を学び取り、

改めて、私の学び得た伝統中国武術文化的感性と、伝統日本的精神と、現代日本社会的処世術の融合体としての「スタイル」を確立できた感覚を持ちました。

新年になって再開した武術隊式トレーニングでは、内容を変えるようにしました。

謂わば「先達後学」という感覚です。

先行してトレーニングが進んで行っている皆さんは、これから大事なのは「武術文化」としての技の体得です。

これは徐文忠老師やお嬢様の徐淑貞老師、楊承冰老師から学んだ武術文化感覚で、文化すなわち「文字」が「化す」という意味においてでの、

伝統的中国文化の感性が武術技能に溶け込んだ技法を行えるようにしていく、というものです。


「先達後学」ということは、現代日本社会の人々の生活パターンにおいての精神性では、

毎日朝に何を求め、昼に何を思い、夜に何を考えているのか、

一人ひとりを把握しにくく、

現代日本社会の環境では、

雑音:ノイズがとにかく多く発せられ、

雑念:不快感がたくさん押し着せられ、

心身的な空間や環境から、それらから逃れにくい事情がたくさんあります。


その中ででも多くの方々に接し、できるだけ進展をさせて挙げたいという思いがあり、

「武術文化的感覚」を「できる人」に伝えていくようにしていきたいと思っています。

そのためには、武術運動を行うというのは、とても多くの動作や意識などが多く絡み合った世界観を持つので、

先ずは「動作」を行える、そして技法の意味や意識を理解する、

それから単練套路と対打套路をしっかりと行える、

ここまで各自各自で練習し、

それから「武術文化的意識」を含んだ練習方法へと移行します。


「先達後学」のトレーニング方法では理解できてきた人に集中して、指導にあたりたいので、

指導中に、私が何も言わない時は、

「動作」を行える、技法の意味や意識を理解する、

単練套路と対打套路をしっかりと通せる、

つまり、この3つを先ず自分自身で確立できないと、

「言葉における意味」が、必ず理解不能に陥る状況になりやすいので、

武術隊、武術班では今後、しっかりと練習時間をとって各自各自で行っておいて欲しいと思います。


中国武術というのは本質的には「伝統文化」なので、文化的側面に理解が弱い方は、歴史長き漢字文化:文字文化感覚を理解して、

そこから入れるようにして頂きたいのと、

「先達:先に達する人」は、どんどん進展し、

「後学:後から学ぶ人」は、先達の人から、一先ず何でも言葉足らずで大丈夫なので、後から後から学び続けて、先行く人へ続いて行って欲しいと思います。

そして今年から重要な意識感覚ですが、伝統文化である中国武術意識には、上手下手という概念ではなく、

「達したか未だ」と「精度」の事実だけなので、

普通一般日本人感覚の「あの人は上手だから」とか「私は下手だから」というような俗性を含まない世界観なので、

「時間」と「努力」と「到達」の3つの純粋な実践と、

根幹にある精神性において理解を深めるために、

伝統中国の思想哲学である「論語」「老子」「荘子」の3つは日本でも文庫本などでもたくさんあるので空き時間を利用したりしては通読をしておいて欲しいと思います。

そうすることで中国武術の「精神文化」の世界を楽しんで欲しいと願っています。