20代の時に10年間、東京の一流ホテル2ヶ所で働いていたことがある。


20代後半にある思いに練習に関心が薄くなり自分の武術に自信を失いつつあった時期もある。


高層ビルからの眺望、日が落ちればきれいな夜景。

大理石の床、豪勢なシャンデリア、ふかふかな分厚い絨毯、美味な飲食。

休日には富裕層の人たちに葉山に誘われ、クルーザーに乗って船上でワインとチーズ。


しかしこれらもすべて慣れてしまえば、全部が全部ただのモノを扱っているだけでしかない。

あるいはモノに振り回されているにすぎない。


オーナーの仕事をして身なりはきれいでも蝉の抜け殻のような人々。

彼らは一人でいるとのっぺらぼうなだけの表情。

もし今自分も彼らとそのまま一緒でいれば今きっと自分もそうなっていたであろうと思う。

ある時に彼らに別れを告げて、

自分の武術の技を売り物に新しくできたフィットネス業界に移った、大変な時期もあったし、浮付いたバブルも崩壊も経験した。

今でも武術での仕事のスタイルはちょっと変わって健身と養生が中心にとなったが、元気に頑張ってやっている。

でも今は何か、何故か、すべてが楽しい。

いろいろとありとあらゆる世界を見てきて、人生に生きていく上で本当に重要なものを知ったからだと思っている。


真実は、本当に身体に良い食べ物に高価なものはない。

本当に良い人は飾らないでも良い。

本当に良い仕事は格好の良いものではない。

本当に正しい言葉や真実を知らない人はいない。


そして誰であっても日々、ただの処世があるのみ。