中国武術の「長拳」という名称は 今ではかなり認知され、
世界各地でそれぞれに活動されている印象を受けますが、その長拳とは何を指すか、ということにはあまり知られることがなかったのでここに記してみます。
「長拳」とは武術の徒手の項目の特徴をいう言葉です。
その特徴とは進退の歩法がはっきりしていて、素早く伸びやかな大きな動き、
つまりは身体の操作が「長」の特徴が含まれる拳術のことを呼び、
この「長」に対して、小さく早く短い打撃法を「短打」といいます。
古くは宋の時代の「太祖三十二勢長拳」全套91式、
その技は「閃展騰揶」「剛 綿 動 静 遍 吸 呑 吐」の八法がその特徴である、
と 戚継光の記した「紀效新書」の著述にあります。
これは現代の江蘇省や淅江省の一帯に多く広まったとあります。
それから明の時代に最も大きく中国全土に武術が広まったことが、共通する特徴になっていったことでしょう。
そして太極拳の中の「長拳」套路
「太極長拳」
陳長興(陳式)→楊露禪(楊式小架)→……→楊澄甫(現代楊式)
楊澄甫
http://
楊澄甫が行ったとされる全套59式からなり、
その拳は「静中求動 動中求静」を行い、均一なリズムで行う太極拳とはその特点は異なるものになります。
それから現代武術運動としての「長拳」があります。
これは明代の「長拳」の概念に沿ってその特徴を分類し総称した呼び名です。
この中には、査拳 華拳 花拳 紅拳(洪拳)少林拳などをいいます。
(他に炮錘 通臂拳 劈挂掌なども含むこともあります)
少林太祖長拳
http://
査拳
http://
華拳
http://
花拳
http://
紅拳
http://
秘宗拳
http://
燕青拳
http://
そして1956年から国家体育運動委員会が武術項目の統一普及をしようという活動から
武術套路を編集しご存知「簡化二十四式太極拳」も作られ、
長拳では「初級長拳一・二・三路」甲組長拳(男子 八段63動作)(女子 六段58動作) 乙組長拳(八段54動作)ができて、そこから「自選長拳」へと流れが向かっていきました。
初級長拳一路
http://
二路
http://
三路(バリエーションがいくつか有)
http://
甲組長拳
http://
自選長拳
http://
http://
そこからも更に競技化を進めるために1990年の北京アジア大会の項目化として
国際第一套路 2000年には国際第二套路が作られ広められました。
第一
http://
第二
http://
そして2003年より昨年行われた北京五輪におけるエキシビジョンだった特別種目用の高難度の自選競技の「長拳」がここ数年でありました。
http://
http://
http://
現在は、日本でもこの普及活動も落ち着いてきた感じを受けますが、
「長拳」もそれぞれの特徴があるので(特に指導者・学習者共に)どれが良し悪しはなく、
どれも目的と各々の用途として
「特徴」と「風格」「身体活動」に違いがあるので混同・混乱しないようにしたいものと思います。
「長拳」は、攻防技術の技の中で、筋肉(インナー・アウターマッスル)と骨を強化し、敏速な反応を高め
柔軟性と跳躍力をも向上させられる優れた拳種といえます。
この他、古くからある民間の素晴らしい伝統の長拳は台湾にも多く残されてもいるので
そういった長拳をも、政治的配慮などとは無関係にこれからはもっと広まって欲しいとも思います。