華侘五禽戯の技がもたらす健康と内在意識との関係「虎鹿熊猿鳥の巻」

昨年の秋に本場で学んだ五禽戯は実技と並行して運動哲学と理論・哲理を学びました。




そこで、この中文の解説を訳したものを紹介します。先ず「虎」

華侘五禽戯は 虎 鹿 熊 猿 鳥の五つの部分に分けられ 

技ごとに弱りやすい肉体的な部分それぞれの応じて健やかにする作用を備えている。

虎の技:虎の技は五行では水に属し 腎臓の働きに関係して作用する。

骨を鍛錬することで下半身の臓器 排泄器官や生殖器官に関係する臓器の力を高めるのが目的である。

この臓器が強化されれば、気魄のある肉体に様変わりし、冷えたからだは元気になる。

虎の動きを真似ることで、目からは力を発し、爪からは威力が生まれる。

この気力を発すれば疲れは取り除かれる。

虎は首を上下左右前後に動かし、尾っぽを左右に動かす。

揺らし奮い立たせて 身体全体に行き渡る運動をするので、人体の能力の発育を促進する。

練功を行う時には外見は力強いが、内面は心が静かで落ち着いていているのである。

呼吸を意識して整えながら背面にある二つの腎臓の間にある命門の経穴(ツボ)に意識を集める(意念を送る)

中医学では腎臓には髄が通り、それを活性化することにより骨髄の流れが活性化し丈夫な骨が作られていく。

その骨髄のために有益な作用をほどこす為に、腎臓の間に気を働かせれば、自然な流れの中で気が多いに動き出す(先天的な元気:浩然之気)

いつも虎の技を練功すれば有益な気で腎臓の力を回復することができる。

丈夫な腰 健やかな骨 強い筋肉を作り上げることが可能である。

呼気と吸気により意識を向けることで肺の機能強化にもなる。

積み重ねた功夫は、脈を保護し通りを良くするので、脈のはたらきが正常に安定されれば 全身に到る 全ての脈に気が行き渡るので、体力気力に満ち溢れるのである。 



鹿の技:鹿の技は木に属し 肝臓に関係する。

鹿はすばしこい動きのできる筋肉をもつ生き物である。鹿の動きを模倣した動作は尾閭がよく作用する。

全身の関節経路を活き活きと働かせることが可能となる。

鍛錬することにより、首周りの気の流れを良くし 意念を導き 気が丹田に蓄えられる。

そしてその満ち溢れた気の力を人体内の各部分にまでエネルギーを撒き散らすことで、

気は働き 呼吸も整えられる。

正に華侘が述べているように血管の流れが良いと病にはならない。


鍛錬された鹿の技は胃のはたらきをも強め、丈夫な脳が出来 腎臓にも有益である。

体力も増強し 血筋を延ばし広げるので 安定した肝臓となり働きも良くなる。

そのために経路の流れが活性化し血流の調和がとれ 傷めた腰や背中の予防と治療が可能になる。肝炎 心臓 脳 血管の病にも有効なのである。

熊の技:熊の技 熊戯は土に属し 脾臓に関係する。

熊の動きを真似をする技を鍛錬すると、疲れやすい体が落ち着いて正常に戻り、内在する気力が増大する。

動作は肩と腕と付け根の原動力を意識して行う。

肩 肘 腕 寛骨(背骨と下肢との連結している部分の骨 腸骨 坐骨 恥骨の3つが癒合したもの)

そして膝 くるぶしの6ヶ所へ螺旋形のひねりの動きで 外から内に向かって弧を描き 揺らす運動をするので それぞれの箇所が強くなる。

熊戯を行うと、丈夫な脾臓が作られ肝臓のはたらきも良くなり、消化を促し 睡眠に良い効果をもたらし 両手 両足 筋骨 筋肉が頑強になる。

内面から力が増大し 弾力性のある関節になっていく。

長く練功を行えば、虚弱な脾臓 肝臓の腫れが酷い人 糖尿病 便秘 胃酸過多症 十二指腸潰瘍 脱肛などの予防や治療になる。


猿の技:猿戯は火に属し 季節は夏である。そして関連する臓器は心臓であり、脳(心)に連動する。

練功によって習練された脳(心)は不愉快な心地を鎮め 楽しくなる情緒を高める。

猿は自由気儘に樹によじ登っては、跳び上がり 走り回り、身をかわすことのしなやかさを持っている。

そして時にはこっそりと身を隠すことにも長けている。猿戯の特徴は中宮の経穴(ツボ)を守り 心から意念を送ることである。

さらに手足の敏捷さを伴った素早い動きを見につければ 落ち着かない 動揺した心持ちを穏やかにする。

猿は心の修練でもあり、心のあらわれは主に血管の働きにある。

猿の技を鍛錬すれば、心を養うことが出来 脳のはたらきに有効なのであり、顔にある七穴(耳 目 口 鼻)の働きを活性化し 正確な判断能力が増大するのである。

心地良い血管の流れは健やかな肉体の状態を実感(実際に感じられること)ができる。

健忘症 脳の血管の病 脳血栓 貧血などの予防と治療に効果が大きいのである。


鳥の技:鳥戯は五行説の金に属し 関係する臓器は肺である。

鳥の中で一番長寿なのは鶴である。

鍛錬されたような皮膚の如く羽毛を持ち、手足は軽くすばしこく 高く飛び上がる能力に優れている。

鳴き競うことを好み 高いところにおいてでも平衡感覚に秀でている。翼を広げて空中を旋回する動作を取り入れたのが鳥戯である。

気海の経穴(ツボ)に意識を向け「働きよ、良くなれ」と願えば

脈の気の流れが通り 調整されて肺活量が大きくなり 全身の経絡の流れが促進され 諸関節は柔軟になっていく。

鳥戯を修練すれば、肺の機能が改善され 筋肉(インナーマッスル)は丈夫になり 生殖器官の臓器のはたらきが促進されていく。

全身においてでは、発汗能力を高め 熱を下げることができる。

また胸(胸郭)を広げ 呼気と吸気の流れを整えることが出来る。

肺結核 寝汗がひどい人 関節炎 心臓や脳に刺すような痛みを持つ人や、喘息による咳がひどくなる人々には、とても有益な免疫力を高められ 大きな予防と治療効果がある。