イギリスのバレエショップで、Freed of London というお店があります。
日本ではチャコットさんで扱っていますが、娘は、1年以上前からFreedのポワントを使っています。
このポワント、賛否両論というか、好き嫌いが分かれます。
型によって、あるいは職人さんによって履き心地が異なり、また同じ型で同じ職人さんでも、一足ごとの個体差が大きいと言われ、同じ方でも、試履きをしてから購入するほうがよいと言われています。
製作上の特性から、職人さんがお休みしたり退職されると、自分に合うものがなくなってしまうことがあるので、足に合う型を2,3選んで履けるようにしておくとよいとも言われます。
また、生地が柔らかいのか、”フリード虫”、という虫がつきやすいから保管に注意、などとおっしゃる方もあります。
いい点は履きならすのに時間が必要なく足になじみやすいこと、なので本番が近くても問題なし、その一方で、つぶれやすいのが短所です。
職人さんの手作りとか、一足一足個性が違う、とか、素敵なポイントだとは思うのですが、ポワントって、何年も時に何十年も愛用する革靴などとは違うではないですか。大切に履くことは難しいし、毎月のように消耗していく道具。なので、いくらバックグラウンドが素敵でも、日本で購入すると1足1万円くらいという価格はネックなのです(もう少しお安く通販しているサイトもあるみたいですが)。そんなわけで、私としては、どちらかというと避けてもらいたいメーカーなのでした。
が、娘は合わないポワントで無理をしてから半年ほどポワントジプシーが続き、娘の周りでフリードを履く方が多く、強く勧められて、試してみたらぴったりだと。一度履くと、ほかのポワントに戻れなくなってしまいました。
Freedに変えてから踊りやすくなったようですが、やはり消耗は速いです。チャコットのポワントや、ロシアのRクラスは、持ちがいい時は1か月くらい、お値段も7000円以内ですみました。Freedに変えてからは、月2足くらい消費していると思います。
そして去年の夏のことです。秋にかけてコンクールや発表会が続くのですが、一番足に合うポワントの在庫が店舗からなくなっており、しかも本番を控えて多めに必要になるので、娘の先輩に教えていただき、ロンドン本店からのメールオーダーで頼んでみることに。6足くらいまとめてお願いすると、送料を入れても40%くらいお得になる、というお話でした。Freedに履きなれてくると、同じ型であれば、全部試履きしなくても、足の方が慣れて履きならせる、という話。Rクラスやチャコットは通販で購入していましたから、その方がもちろんラクよね。
ただ、そのメールオーダー、文字通りのメールオーダーでして、お店にメールを書いてやりとりするというもので、去年の7月7日にメールを送り、すぐに返信が来ました。こちらがほしい型やサイズの在庫がない、とのことでしたので、セカンドベストの型をお伝えして、そちらを送ってほしいと返信しました。
一点気になったのは、、クレジットカードの番号もメールでお伝えして送ってもらう、という点。が、それしか受け付けてもらえないようで、メール本文にクレジットカードの番号を書いて、とりあえず注文は完了しました(パスワード掛けた添付ファイルの方が安全かな、という気もしますが)。一応、クレジットカードの番号と、裏面のセキュリティーコードは別々のメールで送りました。教えていただいた方やその周囲では、いつもちゃんと届いていて、トラブルは起きてないというので、それを信じてー。
まもなく、クレジットカード会社から、「購入歴(?)の不明なクレジットカードの請求があったが、間違いがないかどうか、このまま手続き進めて構わないか」、とちゃんと確認の電話がありまして、クレジットカードのセキュリティー自体は、案外安心できるものなんだなと感心したのです。
しかし、待てど暮らせどポワントは届かず。先輩からは、早くて3週間、長くて2か月くらいと聞いていたので、シーズンの途中で届くかと思っていたのですが、10月になっても、11月になっても届かず。3番目に合うもの、4番目に合うもの、なんとか踊れるポワント、なんとか履きならしながら、秋までのコンクールと発表会がすべて終わりました。
そしてついに年越し。途中で1、2度、確認のメールも送りましたが、梨のつぶて。
やっぱりメールオーダーは当てにならない!と、私は憤慨していました。
しかし教えてくださった先輩は、その間にも注文して、ちゃんと届いていたようなので、娘の希望する型を製作する職人さんがじっくり作るタイプなのか、その方への注文がたくさんあったのか。はたまた娘だけ運が悪く、発注ミスでも起きてしまったのか・・・。
年が明けてからは、娘はオーディションなどバレエと学校でドタバタ、私と夫の両方の実家や親戚で色々あったりで、時々思い出して連絡しなきゃ、と思っているうちに時間が過ぎていました。
そして、3月半ば。ある日突然、段ボール箱に梱包されたトウシューズが、ドサッと届きました
イギリスがコロナ騒動で大変なことになる直前のことです。
最初にFreed本店にメール送ったのが7月7日のことでしたから、到着まで8か月以上かかったことになります。
ここまで来ると、本当にご苦労さまです。
時間をかけて職人さんが作ってくれたポワント、大切に履いてほしい。
ポワントですから、文字通り大切に履くのは難しいですが、時間と手間をかけて作られたことを実感しながら、感謝の気持ちを込めて踊れたら、素敵に踊れるのではないかしら。
そして夏の初めには、娘には大切な舞台があります。本番を控えて、足に合うポワントのストックがあるのは少し安心ですが、リハーサルが始められるのか、舞台が実現するのか、もちろん新型コロナの状況次第です。
あるニュースで、重症化した女性が、呼吸をすると肺にガラスが入ってくるようだ、と表現していました。軽症で済む人が多いとは言いますが、若くて健康でも重症化する人もいて、そうなれば、とてつもない苦しさと痛みと闘うことになります。重症化すると、回復には、かなり日数がかかっているような情報を目にします。
感染に苦しむ人は、もう増えないでほしい。
早く収束しますように。