昨日、故郷の秋田で「八つ目鰻」や「毛ガ二」が獲れたと書いたね。

秋田に居た時も、それほど頻繁に食したことは無かったし、秋田を離れてからは一度もお目にかかっていないんだよ。

 

わしらは終戦の翌年に台湾から引き揚げてきて、本家のお世話になっていたが、秋田弁はわからず、風習も知らず、秋田の生活に慣れるのは並大抵のことではなかったよ。

そんな中で、親戚の「長治おど」(長治おじさん)が、なにかれと面倒を見て下さった。

その「長治おど」が、「八つ目鰻」のとれる、丸子川沿岸の田茂木という所に住んでいたので、時折「八つ目鰻」や「毛ガニ」を持ってきてくれた。

 

貴重な蛋白源として、ありがたく頂いたよ。

また、長治おどの近くの神社にあった銀杏の木が秋に実をつけるので、銀杏の実もたくさん頂いた。

 

「八ツ目鰻」は、お前さん達にはなじみが薄いかもしれないね。

 

秋田では「やつめっこ」と呼んでいた、この魚は、正式には「ヤツメウナギ(八目鰻、lamprey)」と書くんだそうな。

今、魚と言ったが、学問的には狭義の魚類には属さない生物なんだよ。

脊椎動物亜目・円口類・ヤツメウナギ目に属す動物で、河川を中心に世界中に分布しているんだ。

形状が鰻に似ているから、「ヤツメウナギ」という名前が付けられたが、魚類ではなくて「円口類」なんだ。

円口類は、脊椎動物の中では原始的な、顎のない「無顎類」で、現生している円口類は、ヤツメウナギとヌタウナギだけで、生きた化石とも言われるよ。

たしかに、正面から見た顔は異様だね。

歯の無い丸い口は、アスパラガスを輪切りにしたような形だね。

この口で、鮭などの魚類に嚙みつくのだそうな。

鱗は無く、体長は13cm~100cm。

50cm~60cmくらいのものが多いようだが、近年小型化が進んでいるそうな。

「ヤツメウナギ」の名前は、目の後方から七つの鰓孔(さいこう・えらあな)が並んでいて、本来の目と合わせると、目が八つあるよう見えることから来ている。

ドイツでは、鼻の穴も加えて、片側に目が9っあるように見えることから、Neunaugeと呼ぶそうな。

秋田は、国内では有数のヤツメウナギの産地なんだね。

獲るには、竹で作った「す」という道具を使ったよ。

秋田では、「どっこ」というが、「やつめうなぎ」が入ったら、出られない仕組みになっている。

「ドジョウ」も「蟹」も、この「どっこ」を使ったが、それぞれ「どじょどっこ」「がにどっこ」と呼んでいたね。

 

串焼き(蒲焼き)にして食べることが多いが、「ヤツメウナギ」の肉は鰻の肉よりも硬くて弾力があるため、一口大に切って食べる事が多いらしい。

 

脂肪に富み、ビタミンAの一種であるレチノールを多く含み、滋養強壮や夜盲症(鳥目)の薬として昔から知られているね。

秋田県では、「カワヤツメ」をぶつ切りにして醤油と出汁の濃い目のツユで、すき焼き風に煮込む「かやき」が冬の味覚となっているよ。

この「かやき」は、本来は鍋の代わりに「ホタテガイ」の貝殻を使ったんだそうな。

だから、「貝焼き」が「かやき」になったんだと、わしの爺さんが教えてくれたよ。

そういえば、わしの爺さんは、引揚げの時に、荷物の中に貝焼き皿を入れてきたね。

 

近年は環境の変化から国産の「カワヤツメ」が入手困難になりつつある。

このため、2015年からアラスカ産の「ヤツメウナギ」も輸入されているそうな。

 

雄物川下流に位置する強首という所に居た親戚の家に行き、夏は雄物川で泳いだが、川のへりに小さな穴がたくさんあいていた。

ひょっとしたら、あれは「ヤツメウナギ」の巣だったのかもしれないね。