朝、ローブレナを飲んで一日が始まる。

右手と右足のむくみが少し気になる。

お腹の張りは続いているけれど、体の調子は悪くない。

商談中の会話もすっと出て、思考も冴えていた。

“普通に話せる自分”が戻ってきた──それが、今の喜びだ。




夕方、用事があって子どもたちと車で出かけた。

バイト帰りの長女を迎えに行く途中、

「ドライブしたいなぁ」と長女が言った。

その一言に、車内の空気が少し変わった。


しばらくぶりの三人。

知らず知らずのうちに、いつも小さな喧嘩をしていた三人。

「もう誘わないで」と言っていた次女まで、

今日は不思議と穏やかだった。


でも、私はやんわりと首を振った。

ローブレナの副作用でむくみもあり、体を休めたかった。

「今日はやめておこうね」

そう伝えると、みんな静かにうなずいた。

少しだけ寂しそうに、それでも笑っていた。




夜、皆を送り、車を止めた。

もう一度だけ、バックミラーの中で長男が振り返った。

その一瞬の表情が、なんともいえず胸に残る。

最近、長男は口数が少なくなった。

でも、その沈黙の中に、優しさや成長が見える。




少しして、お願いしていた洗濯物を長男がマンションの下まで持ってきてくれた。

すると、次女も長女も降りてきて──

気づけば三人全員がそこに立っていた。


何も言わないまま、

半ば強引に車のドアを開け、みんなが乗り込んできた。

まるで「行こうよ」と言葉を交わす代わりに、

その行動で伝えてきたようだった。


そして始まった“半強制の夜のドライブ”。

車内には笑い声が戻り、

ライトに照らされた横顔が、あの頃のままだった。





エスコンの前を通りながら、

ふと、病気になる前の自分を思い出した。

何もかもが当たり前で、

それがどれほど幸せだったかを知らなかった。


後悔しかない過去。

でも、どうにもならない時間の中で、

今こうして子どもたちと笑っていられる。

それだけで、生きている意味を感じた夜だった。




ローブレナ。

今日の副作用はむくみ。

それでも心の中は温かい。

ローブレナと共に生きるこの日々に、

たった数十分のドライブが、

何よりの薬になった。