LINEでやり取りしながら、次女を迎えに行った。
今はこういう形が当たり前になっているけど、
一年前までは、一緒に住んでいた。
何でもない朝。
何でもない会話。
それが、今は少しだけ遠い。
正直、さみしい。
でも、こうして迎えに行って、同じ時間を過ごせるだけで、
少しだけ救われる自分がいる。
札幌、4月18日。
この日は、札幌のライブイベント IMPACT。
Zepp Sapporoを含めたライブ会場が8ヶ所くらいあって、
たくさんのバンドが一日中鳴っているイベント。
簡単に言うと、
札幌の街を歩きながら、音楽を浴び続ける日。
30バンドくらい出ていて、
朝から夜まで、ずっと音があった。
そしてその中に、
昔、私がよく活動していた箱があった。
SUSUKINO 810。
Crazy Monkey。
名前を見ただけで、少し胸が動いた。
ローブレナを飲みながら迎えた一日。
体は万全じゃない。
むくみもあるし、言葉が詰まる日もある。
それでも、この日は違った。
これで、次女とは3回目のライブ。
まさか、バンド女子になるとは思ってなかった。
正直、嬉しい。
でも、その嬉しさはあまり表には出さない。
気づかれないくらいでいい。
ただ、裏ではちゃんと動いている。
ライブを調べたり、
タイミングを見たり、
さりげなく誘ったり。
全部、自然に見えるように。
気づかれなくていい。
でも、この時間は、ちゃんと作りたかった。
10時スタート。
札幌の街を回りながら、
いくつもの音を浴びていく。
あの地下の空気。
あの距離感。
昔、私が音を鳴らしていた場所。
ステージの上にいた頃の自分と、
客席から見上げている今の自分。
同じ場所なのに、立ち位置が違う。
でも、不思議と、全部繋がっていた。
隣には、次女がいた。
昔、対バンは少しだけ対決だった。
どっちが上か。
どっちが持っていくか。
そんな空気があった。
でも今は違った。
誰かの音が鳴っているだけで、
ちゃんと嬉しかった。
大好きなバンドにも出会えた。
正確に言うと、
次女が好きなバンドを、私も好きになった。
若いバンド。
まだこれからのバンド。
それでも、音も、表情も、全部がまっすぐで。
心を持っていかれた。
がむしゃらにやってる姿に、
昔の自分が重なったのかもしれない。
気づけば、感動していた。
おじさんは、普通に泣きそうになっていた。
好きなバンドが、3つある。
その中の一つは、
もう曲を覚えるくらい聴いている。
最近は、巡回中にも流している。(笑)
次女が好きだった音楽を、
今では私の方が普通に聴いている。
こういうのが、なんか嬉しい。
私はMIで学んだ音楽理論もあるから、
最近のバンドを聴くと、
「なるほどね」
と思う瞬間がある。
コードの動き。
メロディの乗せ方。
リズムの抜き差し。
展開の作り方。
昔とは違う、今の音。
それを、次女から教えてもらっている。
おじさん、普通に勉強になっている。(笑)
しかも、出待ちまでした。
中学生で出待ちは、なかなかしないでしょ。(笑)
もしかしたら、
変なことを教えてしまったのかもしれない。
でも、バンド女子は早いほどいい。(笑)
でもね。
おじさんも、ここで輝いていたのよ。(笑)
あの頃は、ステージの上で。
今は、客席から。
立つ場所は変わったけど、
音に震える気持ちは、何も変わってなかった。
がんになっていなかったら。
そう思うことは、もちろんある。
なっていなければ見えなかったこともあるし、
なったからこそ感じることもある。
どちらが良かったのかなんて、わからない。
ただ、確実に言えることがある。
今がある。
そして、この今は、
今でしか感じられない。
次女と同じ場所に立って、
同じ音を聴いて、
同じ時間を体感する。
それが、今の私にできる、
子どもへの思いであり、行動なのだと思う。
いつか、次女が大人になって。
もしその時、私がそばにいなかったとしても。
いたとしても。
子どもができたり、
ふと何かを思い出した時に、
きっと、あの日を思い出す。
札幌で、同じ音を聴いて、
同じ時間を過ごしたあの日を。
そして、
「あの時、幸せだったな」って、
ちゃんと実感できるはずだ。
だから私は、今をつくる。
つらくなった時に、次女が、
「あの時、幸せだったな」って思い出して、
「よし、もう少し頑張ろう」って奮い立てるような時間を。
思い出は、勝手にできるものじゃない。
残るように、つくるものだ。
気づけば、21時。
まだ続いていたけど、
私たちの一日はそこで終わりにした。
長いようで、あっという間だった。
帰りは恒例の魚べい。
ライブの余韻のまま、
何でもない顔で寿司を食べる。
その時間も、よかった。
ローブレナの副作用はある。
でも、
「行けるな」って思えた。
ちゃんと、この一日をやり切れた。
ありがとう、って思えた。
ただ、17時くらいから、肩と腰が痛くなってきた。
それも含めて、今の自分なんだと思う。
帰り道で、来年の約束もした。
来年は、
迎えに行くんじゃなくて、
一緒に玄関を出たいね。
朝から夜まで、
生き切った一日。




