11カ月でやってきたハッピー・ハッピー・サプライズ!!!!!(上) | フーテンの横チン

11カ月でやってきたハッピー・ハッピー・サプライズ!!!!!(上)


2016・6・12~愛媛・松山市~
 吹き抜けの館内に、自分の名前が大きく響き渡った。待ちに待った瞬間。感極まり、その場に座り込んでしまった。両の手のひらで顔を覆い、おえつを漏らす。涙が止まらない…。フジグラン松山であった地産地消フェアのライブ2部。萌景の7月1日からの正規メンバー昇格が発表された。昨年7月12日に愛の葉ガールズに加入してから、ちょうど丸11カ月。予期せぬ、うれしい、うれしいサプライズだ!!!!

 3曲を歌い終わった後、山下マネジャーがステージへ。SACKYの「しょこら」としてのソロ活動や、愛ちゃんの研修生グループ・Angeのリーダー就任があらためて報告された。そして、美紀ちゃんのレギュラーグループ・Leafの新リーダー、未唯の副リーダーへの抜てき、そして、きよらの統括リーダー就任が発表された。先輩たちの話を、萌景は静かに聞いていた。

 もちろん、発表がそれだけで終わるはずがない。山下マネジャーの話は研修生からレギュラーへの昇格の話題に移った。「このたび、1年間の研修活動を頑張って、晴れてレギュラーメンバーに昇格するメンバーがいます!」。集まったファンの間から「誰だ、誰だ?」の声が漏れる。もちろん、対象者は愛美ちゃんと萌景の2人しかいない。

 まったく頭になかったんだろうな。ほんの少し、笑顔になった萌景は両の手のひらを胸にあてる。「ここフジグラン松山さんで発表します。そのメンバーは!」。山下マネジャーの声を聞き、隣にいた新リーダー・美紀ちゃんが萌景のほうを向いて、手を合わせた。同じように、萌景も目をつむって、祈りのポーズになった。

 「誰、誰?」。ほかのメンバーもそわそわしながら、うれしそうに待ち構えている。じらす山下マネジャーに、SACKYたちが「そんなの要らん。早く、早く!」とツッコミを入れる。待ちきれない萌景は手を合わせつつ、同マネジャーを見ながら、その瞬間を待った。

 「愛の葉ガールズ、大本萌景さんです!」。やった!!その瞬間、神妙のおもむきだった表情が一転、笑顔になった。

 その場に座り込んで、喜びをかみしめる。未唯や美紀ちゃんたちが笑いながら「おめでと~う!」と祝福の言葉をかける。きよらが近づいて、そっと抱きしめる。ステージ下から、佳歩や未侑ら同じAngeのメンバーも駆けつけた。

 「萌景、おめでとう!」「やったね!」。たくさんの祝福の言葉が飛び交うなか、萌景がそっと手のひらを顔からはずした。その表情は涙、涙でボロボロだった。

 横にいたきよらを見つめ、泣きながら笑った。Angeたちの笑顔の輪に囲まれ、さらに笑顔になる。「泣いてる~」。指を差しながら笑うきよらの声が聞こえそうだった。

 とめどなく、涙があふれ出る。立ち上がった萌景の右目から、大粒のしずくが流れた。もう、顔はグシャグシャになっちゃったけど、そんなの関係ないよね。うれしくて、うれしくて、たまらないんだから…。

 ひたすらに泣き続ける後輩を、きよらがやさしい表情で見つめていた。「おそ松さん」などのアニメ好きで、ゲーム好き。趣味が共通していることもあり、よくいっしょに行動している。妹のような、かわいい14歳に、お姉さんはそっと寄り添っていた。

 きよらにマイクを渡されて中央へ促されると、待っていた未唯に「おめでとう!」と頭をポンポンされた。萌景にとって、未唯は加入当時からの指導役。礼儀やルールなど、農業アイドルとしてのさまざまなことを教わってきた。

 時に厳しく、時にやさしく。そんな先輩と抱き合うと、止まっていたはずの涙がまた、あふれ出した。満面の笑みの未唯、そして涙顔の萌景。とてもほほえましい光景だった。

 莉緒がちょっぴりいたずらっぽい表情で泣き続ける萌景を見つめている。同じ中学3年生だが、莉緒は先輩として、未唯と同じように指導してきた。同時に、よきライバル。2人にしか分からない空間があるんだろうなあ。

 そして、ファンへのあいさつ。「私がレギュラーに上がれたのも、すべてはみなさまのおかげです。みなさまが応援してくれたり、悲しい時には励ましてくれたりしたので、いまの自分があると思います。これからもよろしくお願いします。ありがとうございました!」。泣きはらした顔で、思いを言葉にのせると、万雷の拍手を受けた。

 レギュラー昇格の認定証はSACKYから手渡された。おそらく、萌景にとっては厳しい先輩。Angeの監督として指導も受けてきた。代読する先輩の言葉をしっかりと聞き、笑顔で認定証を受け取った。めっちゃうれしそうだ。

 そして、フジグラン松山の下石課長から、花束が贈呈された。これまでの通例だと、こういった昇格発表などは愛の葉主催のイベントでのみされてきた。だから、まさかこの日に発表されるとは予想もしなかった。粋な計らいで、うれしいサプライズ劇が演出されたんだね。

 たくさんの涙を流した後は笑うだけだ。みんなから、たくさんの祝福を受けた萌景は認定証をファンに見せながら、最高のスマイルを浮かべた。歯をむき出しにした、クシャクシャの笑顔。喜びで胸いっぱいって感じだね。やっぱり、萌景はこうでなくっちゃ。
 突然、訪れた大好きな萌景の大事な記念日。1部のライブでは髪を下ろしていたが、2部では以前、プレゼントしたアイスクリームの髪飾りをつけてくれていた。何度か着けてくれていたけど、ライブで着けてくれたのは初めてだ。それも昇格発表の日なんだから、これ以上ない最高のめぐりあわせ。一番の萌景推しとして、めっちゃ、めっちゃ、うれしい時間になった。
(続く)