深みが増した思い出の場所 | フーテンの横チン

深みが増した思い出の場所


2016・4・16~愛媛・今治市~
 やっぱり自分にとっては、ほかの場所とは違うんだよね。フジグラン今治であった「オール今治フェスタ」。この日は愛ちゃん、愛美ちゃん、そして萌景の3人が出演した。開店と同時に入店。イベントステージ、そして出店ブースが並ぶフロアを見て、なつかしさが甦ってきた。たった約半年前のことだけど、あの日の出来事が遠い昔のように感じられた。

 午前10時から始まった、ゆるキャラショー。萌景は髪を下ろした状態で登場した。前髪がきれいにそろっていて、ほおもピンク色で、かわいかった。「おどるポンポコリン」「夢をかなえてドラえもん」「ようかい体操第一」とおなじみの3曲。子どもたちといっしょに楽しそうに踊っていた。時には、客席に足を運び、女の子と同じ目線で踊る。顔をくしゃくしゃにした笑顔がはじけまくっていた。
 ゆるキャラショーが終わり、メンバーはブースの手伝いに回った。今治のうまいものが集合している。ちと見て回ろうかなっと思っていたら、背中越しに「横チンさ~ん」の声。見なくても分かる。萌景だ。「これ、いっしょにつくろう」。見てみると、なんだか夢の国のような店のブースだった。スイーツ・デコレーションができるそうで、マカロンのストラップや写真立てなどをつくれるという。へえ、萌景はこんなのが好きなのか~。

 いいよ。何をつくろうか?「ゆめかわいいのをつくりたい」。ゆめかわいい??「うん、そうだ、ペンケースをつくりたい。学校で使いたいから」。萌景はペンケースの上にいろんなデコレーションを並べ始めた。マカロンやキャンディー、フルーツ、ゼリーなどなど。「こんな感じかな?」。おお、いい感じやん。でも、こんなかわいいのをつくって、本当に学校で使うの?「うん、使うよ」。ホンマかいなあ。

 イメージができたので、お店のお姉さんがクリームに見立てた接着剤を「こういう感じで…」と手本を見せた後、萌景がペンケースの表面にクロスに描き始めた。そして、クリームの上にデコレーションを置いていく。ここからは2人の共同作業だ。「そのキャンディはここかな?」。OK。このレモンは?「この辺に置いて」。はい、はい。ゼリーはここでいい?「うん」。このイチゴはどうする?「マカロンの上に置こうかな」…。こんなやり取りをしながら、2人で並べていった。

 マカロンの上にイチゴを並べて、お人形さんも置いて、はいできあがり!おお、めっちゃいい。ケーキと間違えて食べてしまいそうになるくらいだ。「かわいい!」。思い通りのものができたみたいで、萌景は満足そう。接着剤が乾くまで6時間ぐらいかかるみたい。「控室に持って行って、乾かしておくね」。とっても、うれしそうな表情だった。

 このスイーツ・デコレーションの店には、髪飾りなども並べられていた。「これ、かわいい」。萌景はアイスクリームの形をしたものを選び始めた。「あのね、髪の毛をお団子にしたいんよ。これがあれば、うまく巻ける」。そうなん?鏡を見ながら確かめる姿が愛らしい。「お昼につけるから、いいでしょ?」。萌景にこんなことを言われちゃ、買わないわけにはいかないよね。結局、アイスの髪かざり3つと、スイーツのヘアピンをプレゼント。「ありがと」。ペンケースもつくって、ちょっぴり値段が張ったけど、喜んでくれたからいいかな。

 休憩から戻ってきた萌景はツインテールになっていた。その結び目には、数十分前にプレゼントした髪飾りをつけていた。うわあ、さっそくつけてくれたんだ。めっちゃ、うれしかった。髪の毛が伸びてきたし、ツインテールもよく似合うようになった。それにしても、髪の毛にアイスクリームがのっかっている感じがして、おもしろいね。

 えのはうすでのホワイトデー・イベントの時、萌景の好きなキャラクターのマイメロディの髪飾りをプレゼントしたのだが「ちょっとかわいすぎて、イベントではつけられない」って言っていた。まあ、確かに子どもっぽいものだったし…。どんなのがいいのか、よく分からないんだよね。だから、この日みたいに萌景自身が選んでくれたほうがありがたい。目の前で喜んでくれる姿も直接見られるからね。

 昼休憩の後には、言っていた通り、髪の毛をお団子にしていた。アイスの髪飾り3つに、スイーツのヘアピンと全部、つけてくれていた。やっぱり、大好きな子がプレゼントしたものを大事に使ってくれているのが分かると、とてもうれしい。14歳の誕生日に渡したマイメロの着ぐるみも着てくれている。ほかのメンバーから「萌景はファンからもらったものは大事に使っているよ」と聞いた時は、胸が熱くなった。

 フジグラン今治。自分にとって、大切な思い出の場所だ。昨年10月10日、萌景推しになった。推していた、あるグループの女の子が卒業。自分のなかで「もう、こんなさみしさを感じたくないし、推しはつくらない」と心に決めていたが、8月6日にフジグラン松山の夕涼み会で萌景を初めて見た時、凪だった水面が揺れ始めた。以降、萌景に会いたくて、愛の葉のイベントに通うようになった。一度誓った決心をぐらつかせる何かが彼女にはあった。心のなかの振り子が行ったり来たりしていたが、ついに「2番目の推し」のところで止まった。

 ペンケースをつくっている時、萌景に聞いてみた。萌景~。「ん?」。フジグラン今治って、オレにとって大事な場所なんよ。「そうなん?」。えー、覚えていないの?「うん。あんまり覚えていない」。まあ、そんなもんかな…。オレが萌景推しになった場所。愛美ちゃんといっしょに今治せんいまつりと、ここを行ったり来たりしていたでしょ?その日、ここで打ち明けたやんか。チェキも撮ったでしょ?

 その時、萌景が言った。「横チンさんって、松山まつりの時から推してくれていると思っていたから」。その言葉を聞いた時、思った。あながち、間違いではないなって。8月9日、城山公園であった松山まつり。萌景は愛の葉eggすの衣装を着て、初めてステージに上がった。天使のような笑顔に引きつけられ、萌景ばかり撮っていた。以降のイベントでも、撮った写真は萌景がほとんど。はっきりと推すと決めたのは10月10日だけど、実際は松山まつりの時からだったのだ。萌景の言うことが正解だ。観察眼、鋭いなあ。

 観察眼とともに、萌景の記憶力に感心することがある。たとえば、チェキを撮る時のこと。ポーズが思い浮かばなくて「見つめ合おうか」と提案すると「それ、もう3回しているよ」と返されたことがある。チェキを見返してみると、本当に3回撮っていた。自分も記憶力には自信があるが、萌景もよく覚えてくれている。その時、なんだかうれしかったなあ。
 でも、このフジグラン今治が大事な場所であることには変わりない。あの辺に今治ラーメンのブースがあったのは覚えている?指を差すと「うん、それは覚えているよ。ウチが最後のトッピングをしたんよね?」。そう。そこで、萌景が「ウチを推してくれている人っていないと思うんですよ…」とこぼした時「目の前におるやん」と打ち明けた。その時、浮かべた萌景の笑顔を忘れることはできない。以降、いろんなことがあったけど、萌景だけを一途に応援してきた。その気持ちはだれにも負けていない。

 2回目のゆるキャラショーを終えた後、また萌景に誘われた。「さっきはウチにプレゼントしてくれたから、今度はウチからプレゼントっていう形で」。研修生だから、ふだんは書けないメッセージを書いてくれるという。それなら、ということで、マカロンの写真立てをつくることにした。マカロンの上にクリームを塗って、その上にクッキーやゼリー、星などをデコレーションしてくれた。そして、マカロンの裏側にメッセージを書いてくれた。
 萌景との大事な場所で、とても楽しい時間を過ごした。約半年前のいい思い出に、また新たな思い出が書き加えられた。もちろん、フジグラン今治以外でも、たくさんの出来事がある。うれしかったこと、つらかったこと…。いろいろと積み重ねてきて、いまの自分がいる。「これからもよろしくね」。最後に書かれているメッセージ。このひと言だけで十分だった。もちろん、これからもずっと萌景推し。あらためて、そう誓った時間だった。