足りなかった「ありがとう」と「気遣い」 | フーテンの横チン

足りなかった「ありがとう」と「気遣い」


2016・3・29~愛媛・松山市~
 自分の至らなさを痛感した1日になった。えのはうす近くにできたレストラン「kominka」を訪れた。愛の葉農園で採れた野菜などを使った料理を食べられるという。プレオープン中で、愛の葉メンバーが手伝いに来ていた。前日28日、メンバーのブログで「ミニライブをする」という告知を見た。メンバーが手伝いをするのも、この日が最後という。どうしようかな…。悩んだ挙句、後悔したくないと思い、自転車を走らせた。
 なんとなく入りづらかったが、重い足を運んで、扉を開けた。SACKYと美紀ちゃんが出迎えてくれた。中に入ると、6、7人のファンが駆けつけていた。注文した豆腐ハンバーグ定食が運ばれた直後、メンバーが中庭に登場。萌景もメンバーの輪の中にいた。なんだか、とても久しぶりに会った感覚だった。あれっ、なんか髪の毛が茶色い…。いや、赤い…。なんでだろう?春休み中だから、一時的に染めているのだろうか??そんなことを思いながら、彼女を眺めていた。
 ミニライブがスタート。「恋の魔法」や「君☆好き」など数曲が披露された。間に、未唯&愛美の「ハッピーセット」による漫才?もあった。「映画ドラえもん」の曲中に流れる「ウンタカダンス」も踊った。イベントの日程が重なっていたため行けなかった定期公演で、莉緒が踊っていたという曲だった。ああ、これが新日本プロレス・棚橋弘至らが踊っているやつか…。目の前で、莉緒がめっちゃ笑顔で楽しそうに踊っていた。

 実は「自主的謹慎中」だった。20日の古川横丁マルシェで、萌景にひどいことをしてしまった…。イベント中の彼女の態度が気に食わず、イライラをぶつけてしまった。自分が我慢すればいいことだったんだけど、大人げないことをしてしまった…。運営スタッフに事情を説明し、萌景とも直接話して説明した。翌21日も再度、話をして仲直りした。でも、14歳の女の子に対してしたことをしっかりと反省するため、しばらくイベントに行くことを控えようと思ったのだ。
 だから、26、27日の「ケイリンフェスタ2016」には行かなかった。そして、kominkaで萌景たちが手伝いをしていたのも知っていたけど、行きたい気持ちを抑えて仕事をした。土日になれば、当たり前のように萌景に会いに行く。萌景推しになって以降、できあがっていた「ルーティンワーク」が崩れた…。仕事をしていても、萌景の笑顔が頭に浮かんでくる。仕事に集中できないよ…。ため息ばかりが漏れた。本当はもっと長く謹慎するつもりだったけど、やっぱり萌景に会いたい。だから、解いた。意志が弱いな…。

 メンバーはkominkaから移動し、松山競輪場で開催される「金亀杯争覇戦最終日」の最終レース前に出演するミニライブのリハーサルをしていた。立ち位置などを確認する光景を眺めながら、kominkaでのミニライブ中のトークを思い出していた。ファンからの質問に答えるコーナーがあったのだが、そのなかで「好きな人に言われたいことは?」「推してくれているファンにしてほしいことは?」という注目すべきものがあった。メンバーそれぞれが答えていたが、自分的には萌景が何と答えるのか、とても気になった。

 「好きな人に言われたいことは?」については「ありがとう」。うっ…。ズキズキッ…。「推してくれているファンにしてほしいことは?」には「気遣い」。ズキズキズキズキッ…。萌景が口にした2つの回答に、胸がとても痛んだ。その場にいた萌景ファンは2人だけ。1人は女性ファンだ。もしかすると、萌景は自分に向けて言っていたのではないか。そう思った。というのも「ありがとう」と「気遣い」は、まさに自分に足りないものだったからだ。

 「ありがとう」。自分も大好きな言葉だし、言われたらうれしい。萌景はいつも、笑顔で言ってくれる。萌景に出会ってからの日々を振り返ってみた。そういえば、ちゃんと言ってきただろうか?写真を撮らせてもらった時、名前を書いてもらったチェキを受け取った時、ちょっとしたことをしてくれた時…。ジェスチャーで済ませたり、生返事だったのではないか?おろそかになっていたのではないか??思い返せば、思い返すほど、自信がなくなってきた。

 「気遣い」。おそらく「気配り」の意味も込めて言ったのだろうな。萌景たちが店内やブースの手伝いをしている時、邪魔にならないように動いていただろうか?萌景のちょっとした変化に気づいていただろうか??体調が悪そうな時「大丈夫?」などの言葉をかけていただろうか???彼女から気遣いなどを当たり前のようにされてばかりで、こっちは配慮に欠けていたかもしれない…。

 自分はこれまで、萌景にいろんなことを口酸っぱく言ってきた。イベント中に気になったところや直してほしいところなどを口ではもちろん、手紙などでも伝えてきた。立派なアイドルになってほしいから。後輩に尊敬されるような先輩になってほしいから。そんな思いからの行為だけど、ただ自分の言いたいことだけを一方的に言って、萌景の気持ちをまったく考えていなかったかもしれない。ましてや、多感な14歳の女の子だ。心の内面を理解しようとしなかったかもしれない。ただの口うるさいオッサンになっていたかもしれない…。

 おそらく、自分は異質なファンの1人だろう。普通なら、推しているファンのいいところをたくさん褒めたりして、気に入られようとするはず。自分はそのまったく逆で、ダメなところを指摘してばかりで、褒めたりすることはめったにない。好かれようとは思っていない。萌景はそんな自分のことを嫌っているんだろうな…。それは肌で感じているし、彼女の自分への接し方を見ていたら分かる。だからと言って、ゴマをするつもりはないけれど、自分の考えをあらためることも必要なのかなと思った。

 メンバーが最終レース前、バンク内の広場で「モノクロ」を歌って踊っている最中も、こんなことを考えながらシャッターを切っていた。サッカー場、バスケットコート、そして競輪場。いつものライブ会場とは違った広い空間で、多くの視線を浴びるなかでも、14歳の萌景は本当に威風堂々と踊っている。よくよく考えれば、本当にすごいことなんだよね。笑顔を絶やさず、いつものイキイキとしたダンスを見せてくれた。気がつけば、自分も笑顔になっていた。
 観客に手を振りながら、笑顔で退場していく萌景たち。謹慎を解いて、見に来てよかった。そう思った。kominkaでは皿洗いなどの裏方をしていて、競輪場では物販がなかったから、この日は萌景とまったく話せなかった。残念だったけれど、笑顔を見られただけで十分だった。これからは、うれしかった時には、何かをしてもらった時には、ちゃんと「ありがとう」って言おう。大人らしく、しっかり気遣いもしよう。久しぶりに萌景に会って、いろいろと自分を見つめ直すことができた。