罪悪感に満たされた時間 | フーテンの横チン

罪悪感に満たされた時間


2016・3・6~愛媛・鬼北町~
 あらかじめ、事前に強調しておきたい。自分は萌景が大好きだ。自信過剰だって言われるかもしれないけれど、誰よりも彼女のことが好きっていう自信があるし、誰よりも応援しているつもり。時に、その思いが強すぎて、彼女に口うるさくなったり、困らせてしまうことも少なくないんだけどね…。萌景に出会って約7カ月、萌景推しになってから約5カ月。研修生から正規メンバーへの道中にいる彼女をこれからも支えていきたいという思いは誰よりも大きいと思っている。

 その気持ちを、これからもずっと持ち続けたい。そんな強い思いから、ある行動をしようと思ってJAえひめ南広見支所であった「鬼北農業まつり」にやってきた。数日前から、いや正確には、かなり前から考えていたこと。それは「ほかのメンバーとツーショットチェキを撮る」「萌景とは撮らない」「物販中、萌景と話さない」。な~んだ、そんなことか。たいしたことないやん。そう思う人がいるかもしれないけれど、自分にとってはとても大きな決心。悩みに悩み抜いてのことだからだ。

 これまで、萌景以外のメンバーとツーショットを撮ったのは、美紀ちゃん2回、咲葉良1回の計3回のみ。美紀ちゃんとは萌景と初めていっしょに撮った昨年10月10日に合わせて撮った時と、萌景不在のイベントの時だけ。咲葉良とは卒業コンサートの時だけで、ほかはすべて萌景。一部例外をのぞいて「推し以外とは撮らない」という自分なりのポリシーを貫いてきたつもり。それが萌景推しとしての「責務」だと考えていたからだ。

 頑なに守ってきたんだけど、この日だけはそんな思いを捨てようと思った。結論から言うと、自分とチェキを撮っていても、萌景が楽しそうに見えなくなってきたからだった。ずっと萌景と撮っているのだから、マンネリ化している部分もあるのかもしれない。でも、理由はそれだけじゃない。ほかのファンと撮っている時の萌景がとても楽しそうにしている時が何度もあった。その光景を見ながら、自分の時と比べてみた。全然、違っていた…。

 義務的に自分と撮っているんじゃないか…。イヤイヤ撮っているんじゃないか…。そんなふうにマイナスに思ってしまう自分がいた。それに、自分のことが嫌いなんだろうな…と感じる行動を取られたこともある。決定的だったのが2月28日のセガ丸亀でのイベントの時。プリクラを撮る機会があったのだが、萌景に「ある行動」をされた。おそらく、彼女は無意識にしたのかもしれないけれど、自分的にはかなりショックだった…。

 丸亀から松山に帰っている時も、それ以降も、ずっとその時のことばかり考えていた。考えれば考えるほど、気持ちが沈んできた。これまで、萌景だけを見て、一途に応援してきた。それなのに、彼女にその思いがまったく伝わっていない…。そんなマイナスな感情しかわいてこなかった。でも、病んでいてもしょうがない。彼女の気持ちを確かめてみたい。そのひとつの策として「ほかのメンバーとチェキを撮ってみよう」と思ったのだ。
 1部のライブ終了後。雨が降ったりやんだりの天気だったが、メンバーがテントの下の物販ブースにいた。実は「萌景から、ほかのメンバーのチェキを買う」という考えがあったのだが、いざ顔を見たら、さすがにそんなことはできなかった。いつも、萌景からチェキを直接買う。「5枚ちょうだい」と言えば、彼女は何も言わずに自分のチェキカードを5枚持ってくる。でも、この日はそのパターンを崩してまで「裏切りの行動」に出ようとしていた。

 萌景が後ろのほうで何かをしている時を見計らって、ブースに近づいた。美紀ちゃんが「チェキ?」と聞いてきた。うん。そう言うと、彼女は「萌景~」と呼ぼうとした。いや、呼ばんでいいんよ。「なんで?」。いいから。いったん、ブースから離れた。やばい、やばい。計画が水の泡となるところだった…。萌景がチェキ販売の前に来たので、しばらく近づけなかったが、莉緒が入れ替わってチェキ販売の前に来た時、再チャレンジした。
 「ほのちゃんだよね??」。いや、きょうはね、この子と、この子と、この子を1枚ずつ…。きよら、未唯、そして莉緒のチェキを指差した。「えっ、なんで??ほのちゃんは??」。きょうはいいんよ。「そうなん?」。うん。莉緒は不思議そうな顔をしていた。そりゃ、そうだ。いつも、萌景のチェキしか買わないのに、ほかのメンバーのチェキを買っているんだから。横に来た美紀ちゃんが「萌景と何かあったん?」と真顔で聞いてきた。いや、何も。「じゃあ、なんでよ?」。だから、別に何もないよ。その場はごまかしたが、美紀ちゃんは首をかしげていた。

 最初のチェキ撮影は未唯だった。番号を呼ばれ、カードを差し出すと、未唯が「あれ?なんで??未唯でいいの???」。うん。ちょうど、萌景の前を通る形となり、気まずい雰囲気のなかで通過…。その後、未唯に告げた。例の作戦を実行しとるんよ。「ああ、作戦ね」。すぐに理解してくれた。実は昨年末、萌景のことを話していた時「萌景以外の子とチェキを撮ってみたら?そしたら、萌景も考えるかもしれんよ」とアドバイスしてもらっていたのだ。撮影した後「分かっとるよ」と笑ってくれた。ありがとね。SACKYがカメラマンだったのだが、途中から萌景に変わった。危ねえ…。

 2番目は莉緒。「見えないところに行く?」と聞いてきた。階段のところでチェキを撮っていたのだが、萌景がカメラマンをしていた。その状況を見て、莉緒が気を使ってくれたのだ。いいよ、そんなこと気にしないで。そう言ったが、とてもうれしかった。少し離れた場所で、莉緒の「土下座しようか?」という提案で、2人で手をついて土下座ポーズ。あとで気づいたけど、もしかして萌景に謝罪の意味がこめられているのだろうか…。莉緒、本当にありがとう。

 3番目がきよらだった。自分の顔を見た途端「えっ、横チン?ほのちゃんじゃないの??」と案の定、同じ問いかけ。カメラマンが美紀ちゃんで「何があったんよ?」と、また聞いていた。まあ、ちょっといろいろ考えるところがあってね。「考えるところって??」。まあ、いろいろよ。「ふーん」。納得していない様子だった。美紀ちゃんにも、いろいろと相談に乗ってもらっているから、この日の行動がおかしいと思ったんだろうね。細かいことは言えんのよ。でも、いろいろとごめん。
 ほかのメンバーと撮ってみて、いろんな意味で新鮮に感じた。本当は萌景とだけ撮りたい。その一方で、ほかの子と撮ったら、どんな雰囲気なんだろう?撮ってみたいな…という思いが少しもなかったと言えば、ウソになる。「隣の芝は…」ではないが、違う環境に立ってみることで、いつもの環境とはどう違うのかを知りたかった。「どんなポーズをしようか?」「せっかくだから、おもしろいのを撮ろうよ」…。ほかのメンバーとのそんなやり取りが正直、楽しかった。

 イベントに来れば、萌景のチェキは必ず撮る。でも、この日は「萌景とツーショットは撮らない」という考えを貫くつもりだった。メンバーが2部のライブの準備で離れた時、萌景のチェキカードを2枚買っておいた。2部終了後、チェキ撮影再開。萌景の番号が呼ばれた時、カメラマンの理梨花に「ピンチェキ2枚、撮っといて」とお願いした。不思議そうな顔をした2人が近づいてきて、理梨花が「なんで?」と尋ねてきたが、きょうはピンチェキで、と、わざと冷たく言った。おそらく、わけが分からなかったんだろう。萌景がさみしそうに歩いていくのが分かった。めっちゃ、つらかった…。本当にごめん…。

 チェキに日付と名前を書いた萌景が近づいてきた。「横チンさん…」。でも、顔を見ず、右手だけ出してチェキを受け取った。ホント、ひどい行為…。萌景が聞いてきた。「なんかあった…?」。いままで聞いたことのないトーンの声だった。顔を見た。真顔で、戸惑いの表情だった。まともに見られなかった。自分の胸に手を当てて、考えてみて。それだけ告げた。めっちゃ気まずい雰囲気。「分かった…」。そう言って、萌景はその場を離れた。この日初めての会話が終わった。もちろん、自分が100%悪い。
 このまま、ちゃんとした理由を言わないと、お互いにモヤモヤしたまま、松山に帰ることになる。それだけはイヤだ。そう思って、ブースの片づけが終わった後、タイミングを見て、萌景に話しかけた。あのね、オレとチェキを撮るのが楽しくないんやろな…と思ったからなんよ。「そんなことないよ…。なんで?」。この前の丸亀の時に、そう感じたから。それだけ。話を切った。「うん…」。萌景は納得のいかない表情だった。

 この日の「行動」の最大の目的のひとつには、萌景に少し考えてほしいという思いがあった。悩みに悩んで実行に移した行動。でも、萌景とチェキを撮ることが当たり前で、習慣化していたから、気分はもちろんスッキリしていなかった。正直、罪悪感しか残らなかった…。だから、帰り際、美紀ちゃんに「萌景に、オレが『ごめん』って言っていたことを伝えてくれる?」とお願いした。「分かったよ~」。笑って快諾してくれた。
 萌景に会いたい。萌景の笑顔を見たい。萌景と話をしたい。萌景とチェキを撮りたい。だから、愛の葉のイベントに通っている。それなのに、気持ちと正反対のことをして、彼女につらいことをしてしまった。ほかのメンバーとチェキを撮るのは楽しかったけど、気を使わせてしまって、申し訳ないという思いが残った。後悔はないけれど、罪悪感で満たされた。やっぱり、萌景が大好きなんだ。あらためて、自分の気持ちを確かめることができた。
 自分の辞書には「推し変」とか「推し増し」「1推し、2推し」という言葉はない。「1かゼロ」。たとえ、萌景のことが嫌いになって推すことをやめたとしても、ほかのメンバーに推し変したりすることは絶対にない。今度、会った時には、この日の行動を謝って、ちゃんと話をして、いつものようにチェキを撮ろう。この日のような行動は、最初で最後。おしまいにしよう。大好きな萌景スマイルを思い浮かべながら、そう決めた。