不完全燃焼の現役引退…
2015・10・8~愛媛・松山市~
ラジオから聞こえる一報に「やっぱりか…」とつぶやいた。広島カープの東出輝裕内野手が今季限りで現役引退することが発表された。自ら球団に意思を伝え、了承されたという。長年、赤ヘルの二塁手を務めた主力選手の決断。個人的に思い入れのある選手だっただけに、もう少し頑張ってほしいと願いつつ、そろそろかな…という思いもあった。2013年春の春季キャンプ中の紅白戦で、左ひざ前十字じん帯を断裂するという大けがをした。懸命なリハビリで1軍復帰を目指したが、その思いはかなわなかった。
初めて東出に会ったのは、記者2年目だった1998年夏の甲子園。敦賀気比(福井)の主将を務めていた彼と、試合前取材で初めて言葉を交わした。ふてぶでしい表情で、口を突いて出るのは強気な言葉ばかり。見るからに生意気な性格だったけど、一瞬にしてファンになった。俊足好打の選手として注目されたものの、初戦で惜敗。いわゆる松坂世代で、松坂大輔(横浜)が注目を浴びた大会となったが、個人的には東出の印象が強く残っていた。そして、ドラフト1位でカープ入団。カープ担当として彼と再会することになった。
入寮の取材時にあいさつすると「お久しぶりです。甲子園以来ですよね?」の言葉。ちゃんと顔を覚えてくれていて、めっちゃうれしかったのを、いまでもはっきりと覚えている。春季キャンプ中はもちろん、シーズンに入っても、だれよりも話をした。試合前はベンチに座って、プライベートな話ばかり。雑談がほとんどだったけど、いまではいい思い出だ。小さな体ながら、巧みなバットコントロールで才能を発揮。1年目から主力選手として活躍した。4年目に右太もも故障もあったけど再び、レギュラーを取り戻し、チームに不可欠な選手に成長した。
カープ担当をはずれた後も、新聞社を退社した後も、東出の動向はずっと注目していた。でも、3年前に左ひざを痛めて以降、彼の活躍を伝える報道はほとんどなくなってしまった。いまでは日本一の守備を誇る菊池の台頭もあって、影は薄くなるばかり。今季、選手兼2軍野手コーチ補佐となった話を聞いて、1軍復帰をあきらめているのかな…と気になっていた。そして、チームが中日に敗れ、クライマックスシリーズ進出の可能性が消えた翌日に引退の報道。左ひざの故障が致命傷となったはずだが、同時に菊池ら若手の活躍を見て、引き際を悟ったんだろうな…。
自分の部屋には、背番号「2」が入った東出のレプリカユニホームを飾っている。彼にお願いして、サインをしてもらったものだ。選手と記者という間柄だったけど、その時はいちファンの立場になっていた。東出にサインをしてもらったのは、この時が最初で最後。だから、いまでも大切な宝ものとなっている。来季からはコーチとして後進の指導にあたるのだろうか?それとも解説者だろうか??いずれにしても、少しの間だけでもいいから、長い選手生活の疲れを心身ともに取ってほしい。カープ一筋17年はファンの誇りでもある。東出、おつかれさんでした。
