プレイバック・和佳音 26
2014・10・18~愛媛・松山市~
目の前の楽しそうなステージの写真を撮りながら、後悔の念が膨らみ続けていた。ハロウィンパーティにかぎらず、こういったイベントは楽しんだもん勝ち。もちろん、そんなことは分かっているんだけど、どうしても恥ずかしさが先行する。昔から、そうだった。本当は目立ちたい性格。だけど、内心とは裏腹に、行動に移せない自分に、いつも腹が立つ。ピカチュウや赤ずきん、パンダや坂本龍馬…。個性あふれる仮装をしたファンといっしょに、和佳音たちメンバーがステージ上で楽しんでいる。なぜ、自分はいま、写真を撮っているんだろう…。自問自答していた。
AiCuneの定期公演に来るようになって1カ月あまり。元々、アイドルには詳しくはないけれど、AiCuneファンはとてもアットホームだなって思う。いい意味で、ファン同士の仲がいい。共通の趣味・話題を持つと、互いの距離が縮まるのかな。仮装姿になっても、お互いが笑い合いながら楽しんでいる。そういう光景を見るたびに、いいなあって思う。そして、こういうイベントを通して、アイドルとファンの距離もグッと狭まるんだろうなあ。自分は和佳音とはそんなに話をしていないし、まだ距離があるような気がする。自分から仲よくなる機会を逃してしまったかな…。そう思うと、むなしくなった。
仮装コンテストが終わった後、メンバーは仮装姿のままで2曲を歌った。薄暗かった明かりがパッと明るくなった。まずは「ひだまり100%」。自分の大好きな歌だ。いつもの衣装とは違って、ハロウィンのコスプレ姿でダンスして歌うと、また違って見える。踊るたびに、背中のマントが揺れる。衣装が変わると、気分も変わるんだろうね。和佳音はいつも以上に楽しそうに見えた。最後に「キラキラレボリューション」。後方から撮ると、みんなの笑顔を同時に確認することができた。仮装姿のファンもいっしょに盛り上がっていた。
ライブ後は先にツーショット、全員ショット会が行われた。ふだんの定期公演ではあまり撮らないけれど、ハロウィンの衣装を着た和佳音とは撮りたい。まあ、自分はハロウィンの記念Tシャツ姿だったけどね。間近で和佳音を見た。とても似合っていた。かわいい子は何を着ても、似合うんだな…。そう思った。「ポーズはどうしようか?」。和佳音がそう聞いてきたので、和佳音の好きなポーズで、と返した。「じゃあ、ドラキュラポーズにしようか」。ドラキュラが人を襲う時の、5本指を曲げたポーズで撮ってもらった。
そして、サイン会。順番が回ってきた。目の前の和佳音は自分の顔を見るとすぐ、小さくため息をついたように見えた。そして、さみしそうな表情でポツリ。「横チンの仮装姿を見たかったな…」。ごめんね、恥ずかしくて、できなかったんだよね…。そう言うと「どんな仮装をしてくれるか、期待していたんだけどね…」。ごめん…。それしか言えなかった。そして、苦笑いする和佳音を見ながら、やっぱり仮装すればよかった…と後悔した。次は絶対にするから。そう約束して、その場を離れた。うん、絶対にする。自分にそう言い聞かせた。