圧巻のセイルドリル | フーテンの横チン

圧巻のセイルドリル


2015・5・24~愛媛・今治市~
 行ってよかったと思った。バリシップ2015が開催中の今治港に来港していた帆船「日本丸」のセイルドリルだ。世界最大級の帆船であり、航海訓練所の練習船でもある。セイルドリルとは、日本語に訳すと操帆(そうはん)訓練。今回、乗船していた愛媛・波方、岩手・宮古の両国立会場技術短期大学校の実習生105人と乗組員の総勢約160人が観客の前で、これまでの訓練の成果を見せてくれるのだ。
 セイルドリルなんて、めったに見ることができないからね。ワクワクドキドキの気分を抱えながら、開始1時間前に会場に駆けつけた。帆はたたんだままであるため、帆船は骨組が見えるだけ。数時間後には、テレビや写真で見られるような帆を全開に張った、カッコいい姿を披露してくれるというわけだ。う~ん、めっちゃ楽しみだ。

 開始時間になると、白いつなぎを着た実習生が現れた。まずは準備体操。訓練中に足でもつったら、大変なことになるからね。みんな、しっかりと体を動かし、ストレッチをしていた。ちらちらと見える表情はとても緊張しているように見えた。大勢の観客が見ているから、余計に大きいだろうな…。

 実習生はそれぞれの担当のマストへと散らばった。そして、帆を広げる準備をするため、綱状のハシゴを俊敏に上っていった。うおー、めっちゃ速い!まるでおサルさんのように俊敏だ。怖くないのだろうか…。ヒヤヒヤしながら、その光景を見守っていた。

 みんながそれぞれの担当の場所に着いた。首が痛くなるくらい高い場所にいる。一番高いメイン・マストは約55メートルあるという。その数字を見た時、陸上にいるのに、足がガクガク震えた。高所恐怖症のオイラには絶対に無理だと思った。そして、実際に実習生が上っている姿を見て、余計に震えた…。

 実習生はオッサンのようにみじんも怖がることなく、テキパキと帆を広げる準備を進めている。よく見ると、足元はロープ1本だけ。おお、マジかよ…。よくそんな不安定な状態で立っていられるな…。見ているほうが怖かったのだが、みんな黙々と帆を束ねていたロープをほどいていた。

 裏側にも回って、作業を見てみた。腰に巻いたベルトに命綱をつけていた。よかった…。もしものことがあっても、落下することはないってことだな。ホッとした。実況していた指導員の説明によると、作業中は3点をしっかりと安定させるため、骨組におなかをしっかりとつけるのだという。なるほど、実習生はちゃんと指導されたことを守っていた。

 たたんでいた帆のロープを外すと、実習生は船上に戻った。そして、まずは船首の三角の形のジブと船尾のミズンが広げられた。一気に広げるのではなく、順番通りにマストの帆を広げていくのだ。この日は風が吹いていなかったけど、強風に見舞われるであろう海上では、もろに帆が風を受けるからね。常に本番を想定しての訓練というわけだ。

 実習を開始して約1時間。ついに36枚すべての帆が広げられた。すると、会場から歓声と拍手が巻き起こった。おお、帆船だ!カッコいい!!白い帆がバックの青空の下でとてもきれいに映えていた。当然のことながら、模型などでは味わいないド迫力の姿。感動に浸りながら、写真を撮っていた。

 遠く離れた場所を見てみると、多くのカメラマンが並んでいた。自分がいる場所とは何が違うのか。後半の実習開始まで、時間があるので行ってみた。その場所に到着して納得した。後方に来島海峡大橋が見えていたのだ。この日は少しかすんでいたが、天気がもっとよければ、くっきりと見えたんだろうね。

 料理が食べ終わった後の食器を片づけて終わりであるように、セイルドリルもしっかりと帆をたたんで終了だ。実習後半はまず、ピンと張っていた帆を緩めるところから。船上で、実習生がロープを引っ張って、帆を上げていった。

 船首のとんがった棒状のようなバウスプリットにも、多くの実習生が上がっていた。斜めになっているから、足元が安定しないように思えるが、しっかりと体を安定させて、帆をたたむ準備をしていた。

 一番高い場所は、たったの3人だけ。場所が狭いからであろうが、彼らは大変だ。下ろしていた帆を上げるためには、下を見ないといけない。上からの景色は、どう見えるのだろう。高所恐怖症のオッサンなら、絶対に気絶しているだろうな…。本当、尊敬します。

 開始から1時間と少しで、すべての帆をたたみ終えた。そのころには、いっぱいいたはずの観客の数が減っていた。おそらく、すべての帆が広がったのを見届け、帰路に就いたんだろうな。でも、やっぱり最後まで見届けないと、セイルドリルを見に来た意味がない。こういう実習を何度も、何度も繰り返して、自分のモノにしていくんだろうな。
 昨年4月、松山・三津浜で開催された「しまフェスタ」でも、日本丸のセイルドリルがあったんだけど、見逃してしまった。だから今回、最初から最後まで、実習している光景を見て、その時の悔しい思いを解消できた。でも、また見たいなあ。