幻の焼きそば | フーテンの横チン

幻の焼きそば


2014・3・1~愛媛・松山市~
 ウワサにたがわぬ味だった。繁華街の中にある「じゅん」に行ってきた。以前、仕事の関係でお世話になっていたので、お礼がてらに寄ってみたのだ。のれんをくぐって入ってみると、お客さんでいっぱい。おかみさんが「こちらへどうぞ~」と言ってくれたので、カウンターに。ご主人は奥で忙しそうに調理していた。迷うことなく「かめそばをひとつ」と注文した。周りを見てみると、ほとんどのお客さんがかめそばを食べていた。人気メニューなんだなあ。
 「お待ちどう~」。なるほど。焼きそばの上にちりめんがのっている。そして、ムロアジの削り節がダンスをしているみたいに腰を揺らしているではないか。見たことのない組み合わせだ。いつもなら、一眼レフカメラを取り出すところだが、とても出せる状態ではなかったので、スマホのカメラでパシャリ。う~ん、うまそうに撮れたかな?
 ちりめんと削り節を麺と絡めて、一気にひと口。麺には柔らかい部分と硬い部分が入り混じっていて、なんとも表現しがたい食感。確かに、焼きそばのようで焼きそばじゃない!ちりめんのほどよい硬さがうまく重なり合って、歯ごたえもある。やっぱり、なんとも表現しがたい。それでも、病みつきになりそうな味であることは間違いない。
 やっと、ご主人の手が空いたので、あいさつ。「ああ、この前はありがとうございました」と逆にお礼を言われてしまった。「めっちゃ、おいしかったです。病みつきになりそうです」と感想を言うと「そうでしょう?」と満面の笑み。「麺の硬いところと柔らかいところが絶妙でしょう?まあ、普通の麺でつくっているんですけど、つくり方は企業秘密です。ハハハハハハッ」と、豪快に笑った。
 昭和の時代に、松山市内の食堂「かめ」が提供していた焼きそば、つまり「かめそば」は「幻のかめそば」と呼ばれていた。ファンからも惜しまれつ閉店し、姿を消してから十数年。製法が独自で門外不出だったが、ご主人が「かめ」の店主からその製法を学び、幻の味を復活させたのだ。だから、この味はこの店でしか楽しめないのだ。
 「みなさん、お酒のつまみに食べるんですよ」。よく見れば、隣のお客さんもビールや日本酒を飲みながら食べている。なるほどね。この日は自転車で来ていたから断念したが、次回はゆっくりかめそばとお酒を楽しみたいなあ。「今度はそうしてください。お待ちしています」。ご主人とおかみさんの笑顔がとても印象的だった。帰るころには「いつ行こうかな~」って考えていた。