伯爵気分を味わえる館 | フーテンの横チン

伯爵気分を味わえる館


2014・1・11~愛媛・松山市~
 ちょっぴり高貴な気分になった。松山地方裁判所の裏手に、ひっそりとたたずむような雰囲気を醸し出す晩翠荘がある。文字通り「緑豊かな森の中の館」。大正11年、旧松山藩主の子孫にあたる久松定謨(さだこと)の別邸として造られたフランス風洋館だ。ネオルネッサンスと呼ばれる格調高い様式で、左右非対称で構築されている。愛媛で最も古い鉄筋コンクリート造りの建物だ。
 恥ずかしながら、4年間の学生時代にも、故郷に戻ってきてからも、当地を訪れたことがなかった。だって、一番町の通りからは、まったく見えないんだもん。灯台もと暗しとはよく言ったもの。愛媛をもっと知るため、門をくぐった。

 入り口を抜けると、赤じゅうたんが敷かれた階段が現れた。階段は南洋のチーク材でつくられているという。1本、1本に彫刻が施されている。この感じ、好きだなあ。いかにも手づくりって分かるものからは重みがヒシヒシと伝わってくる。

 階段の踊り場壁面には、ステンドグラスが飾られている。大海原を走り抜ける帆船。ハワイから特別注文で取り寄せたものらしい。位置的に北側に飾られているのだが、この光の入り具合がちょうどいいのかもしれない。

 ゲストルームには、豪華なシャンデリア。水晶でつくられているそうだ。目を閉じると、貴族たちがきれいな女性とともにダンスを踊る姿が目に浮かぶ。優雅だったんだろうな。まあ、当方には縁遠い話ですが…。

 太陽が姿を消し、暗闇が空を支配しはじめたころ、晩翠荘はその姿を一変させた。森の中に囲まれるような場所にあることもあり、静けさが加わる。周辺の外とうにも灯りがつくと、なんとも言えない姿を現した!!

 その間、わずか60分。もちろん、昼間に見ても美しい外観だが、夜はさらに重厚で華やかさが際立つ。こんな光景をいままで一度も観たことがなかったなんて、なんだか悔しくてしかたなかった。学生時代に眺めていたら、きっと人生観が違っていたんだろうな…。愛媛、松山の街並みのポテンシャルの高さを身に染みて感じた。