同じ奇跡は二度と起こらない | フーテンの横チン

同じ奇跡は二度と起こらない


2014・1・10~愛媛・松山市~
 後悔した。突然の寒波襲来。雪には縁遠いと思っていた瀬戸内の平地でも、朝から雪化粧となった。家を出る間際になって、空から白いものが降り始めた。カメラを持って、自転車で出発。通勤路の途中にある南堀端に入ると、前がほとんど見えなくなるほどに強くなってきた。チンチン電車と絡めた写真を撮ろうかな…。でも、いまバッグから取り出したら、濡れてしまいそう…。どうしようかな…。会社に遅れそうだし、どうしようかな…。しばらく迷って「昼休みに撮りに行こう」と決めた。
 午前9時前。会社の窓越しに景色を眺めた。民家の屋根も真っ白になっていた。目の前で走る伊予鉄の高浜-横河原線が通過しようとしていたので、念のために1枚押さえた。時間が経つにつれて、雲の切れ目から青空がチラホラ。午前10時を過ぎると、雪はすっかり止み、太陽が顔を出してしまった。昼休みの時間には、雪化粧はすっかりなくなり、ただ路面が濡れているだけの景色しか見られなかった…。
 「撮ろうと思った時に撮らないとダメだ。同じ絵は二度と撮れないんだからな」。ある人生の先輩からもらった言葉だ。写真に興味を持ち始め、一眼レフカメラを触るようになり、仕事でもシャッターを押すようになった。だからこそ、先輩の言葉の意味は身に染みて分かっているはずだった。それなのに、時に「あとで撮ろう」とその場を離れ、結果的に撮り逃し、後悔したことが何度もあった。そのたびにガックリきているはずなのに、時間が経つにつれて忘れてしまい、また同じように繰り返してしまう始末。この日の朝、またやらかしてしまった…。
 同じ自然現象は絶対に起きない。空に浮かぶ雲に同じ形のものはない。海を眺めていても、同じ場所に船がずっと停留しているわけではない。自分が思うところに、小鳥が着陸することはない。だからこそ、目の前にある「奇跡」は絶対に見逃してはいけない。反省の一日だった。