駅舎と海と空とコスモス | フーテンの横チン

駅舎と海と空とコスモス

$フーテンの横チン

2013・11・23~愛媛・伊予市~
 遠い昔に見た写真と同じ風景を初めて見て、なぜだか涙が出そうになった。松山から一両列車に揺られて約40分、かつて「日本一、海に近い駅」と呼ばれたJR下灘駅にやってきた。あのフーテンの寅さんも、キムタクも座ったという駅舎のベンチに座り、海と空をながめた。群青、そしてスカイブルー。水平線がくっきりと見える。もう10年以上前になるだろうか、どこかの駅の壁に張ってあった「青春18きっぷ」のポスターにクギ付けになったのを、いまでもはっきりと覚えている。いつか、絶対に見たい。ずっと胸に抱いていた思いを、やっとかなえた。

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 もう秋だなんて言えないくらいの肌寒い潮風が吹いていたが、ホームにはコスモスが咲いていた。地元の小学生たちがこの秋に植え、駅を華やかにしているのだ。まだ七分咲きだったものの、列車と海、そして空と絡めると、まるで絵はがきのようだ。自称・プチ撮り鉄。雪景色のSLを見た数年前以来の興奮を覚えた。
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 コスモスと列車がコラボした風景ならよくあるが、コスモスと海はそうないだろう。ポツンと浮かぶ黄色の船にピンク色。なんだか不思議な景色になる。遠くに島が見えるほど、この日の空は青かった。

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 「すいませ~ん、写真撮ってくださ~い」。お子さんを抱いたママが近づいてきた。もちろんです!「コスモスといっしょに、私たちが海を見ながら、たそがれている感じで」というリクエストに応えてパシャリ。うまく撮れたでしょうか??
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 気がつけば、もう午後4時半。西日がまぶしくなったころ、松山へと向かう上り列車が入ってきた。陽光を浴びて透き通った花びらのコスモスと列車。青空もいいが、赤く焼けた空も格別だ。残念ながら、太陽は山の中に消えていった。隣で写真を撮っていた老夫婦は「海に沈む夕陽を見たいなら、夏に来なさいな」と教えてくれた。秋の下灘駅も気に入ったが、真っ赤に染まる空と金色に輝く海を見るため、来夏にも絶対に来るぞと誓ったのだった。