このお盆休みに、高機能自閉症のTくんが、久しぶりに私を訪ねてくれました。Tくんは、お母様より、頭二つ分超えて、りっぱな青年になっていました。特例子会社でパソコンの入力作業をしています。きっちりとした性格のTくん、満員電車にゆられて遅刻することなく出勤し、仕事が、とても、楽しいそうです。
Tくんとの初めての出会いは、私の前の職場だった療育センターでSTとして勤務していた時でした。幼稚園の年長さんの時にTくんは、相談に見えました。
1年待ってやっと入れてもらえた幼稚園なのに、園庭の遊具にしがみついて、教室に入れなくて困っているとのことでした。
お母様は、Tくんが幼稚園にいられなくなったらどうしようとひどく心配されていました。
早速、幼稚園を巡回し、様子を見たところ、Tくんは、担任の先生がやっとの思いで教室に連れてきて、並べられた椅子に座るように伝えても、
着席せず、また、園庭の遊具に走って戻ってしまうのでした。Tくんは、STの指導室では、ドラえもんのパズルが大好きでした。
そこで、ドラエモンの絵を半分に切って、一方を教室の椅子に貼りました。他方のドラえもんの絵はTくんに渡し、「お教室入って、ドラエモン、パッチンしよう」と話しかけると、教室に入って、椅子に張って置いたドラエモンの絵に持って来た絵を合わせて、椅子に座ることができました。
その日から、どこかへ、移動する時は、ドラエモンを目印にする事でTくんは園庭に飛び出すことがなくなりました。それどころか、Tくんは、にこにこして、移動することができるようになりました。幼稚園も快くこのやり方を取り入れスケジュールへと発展させて下さいました。他の子どもたちも、Tちゃんのドラえもんと歓迎してくれました。
きっと、Tくんは、先生のおっしゃることが分からず、自分はどうしたら良いのか不安でたまらなかったのでしょうね。
このやり方は視覚支援というものです。自閉症スペクトラムの方は、耳から聞いた言葉の理解が苦手で物事の見通しがつきにくいので、
新しい環境や新しい事柄に不安が強くなります。その一方で、視覚的な支援をしてあげる事で、安心して行動できます。しかし、単に視覚化すればよいわけではなく、そのお子さんの興味や特性に合わせた工夫が必要になります。
視覚支援と並行して、言語を理解する力や話す力を育てて行くのが大事であることは言うまでもありません。お子さんの強みである視覚支援により見通しがつき安心した状態が保障された時に初めて苦手な言語を受け入れる心の余裕が生まれるのです。
集団行動の基礎ができる幼児期に、安心して生活できるように必要な支援をしてあげる事は、とても、大事な事でしょう(参考 TEACCHプログラム5days セミナー)
幼児期の間にSTで取り組んだ事