30歳のころ。
大好きだった彼と別れて、落ち込んでいたときに
友達がとあるゴーコンに誘ってくれた。
お相手は、超メガバンクの方々。
ノリもよく、頭も切れて感じのいい作田君と
どらえもんのような体型に、メガネの”人が良い”神戸君。
それに、お笑い系の林君。
特に、”素敵”と思う人はいなかったけれど、同期なこともあり
話も弾んで、その後何回かみんなで飲むようになっていった。
何回目かの飲みの後。”どらえもん”神戸君から携帯に電話があった。
”今度、二人で飲みにかない?”
まったくタイプではなかったし、つきあうとも思えなかったけど
人がいい神戸君は、まあ悪い人じゃない。
当時、彼と別れたばかりの私は
”生理的に嫌じゃなければ、誘われた人とは1度会ってみよう”
と、今となってはよくわからないルールを作ってデートをしていた。
よって、このルールにより、神戸君とも二人で会ってみることにしたのだ。
しかし、二人で会うと、どうも様子が違う。
グループで飲んでいるときには、みんなの話を”うん、うん、そうだね”と
丸顔の中の細い目を糸のようにしながら微笑んでいた神戸君。
完全なる聞き役に回っていた神戸君。
私の印象は”ちょっと、あかぬけないけど、人のいい人”だったのに。
それが、二人で話していると、
基本は、”良い人”の”ドラえもん”神戸君なのに
ときおり、細い目の奥の眼光するどく、
もっさりとした体をすこし反らせて、自信に満ち溢れた毒を吐く
”スネオ・ジャイアン”神戸君に変身するのだ。
・・・それも、恋愛の話で。
”いやあ、おれさ、スタイルの良い子じゃないと受付られないんだよね”
”・・・・ふーん・・・・”
”割と、可愛いけど、ちょっとポチャッとした子にいいよられてさ、まいったよなあ”
”・・・・ふーん・・・。じゃ、藤原紀香とか、タイプなわけ?”
”あー、あれ可愛くないじゃん。もしもアイツに付き合ってって
言われたら、俺断るよ”
”はあ~!?・・・・・”
「いやあ、僕なんか、一途に好きになってくれる子がいたら
それだけで、好きになっちゃうよな~」とかいいそうな、
雰囲気の神戸君だったのに。
どこから湧き出してくるのだろうか、この自信。
その、あかぬけない雰囲気と、この毒のギャップにあてられてしまった私。
もう二度と会うことはないだろう。
そう思って5年がたった今年になって、
神戸君から何度も電話をもらった。
留守電にメッセージを残さない人には、折り返さない主義の私としては
着信だけする神戸君のことは無視していた。
しかし、昨日になって、二度ほど続けて
”あ、これを聞いたら折り返しください”と留守電にメッセージが入っていた。
”折り返しください”とメッセージを残した人には
折り返す主義の私としては、
二度も入っていたので、迷ったあげくに神戸君に電話したのだ。
しかし、何回かコールしたものの、留守電に繋がる。
特に用事はないので、そのまま切った。
すると、すぐに神戸君からの電話がかかってきた。
”あ、ヨーコちゃん、今電話くれたよね?どうしたの?”
”・・・・・・”
相手を見下したような、耳ざわりな声のトーンは
完全に、”スネオ・ジャイアン”だった。
完全に切れた私は”久しぶり”とか”こんばんわ”などの
人道的な挨拶をすっとばして
”折り返しくださいというメッセージが入っていたので、
折り返しさせていただいたんですが” と、かなりドスの
きいた声で機械的に会話を続けた。
すると・・・
”あ、それ間違い。サトウ ヨーコ間違い。
人違いなので、すみませーん。失礼しまーす”
と今度は”ドラえもん”トーンの明るい声で
素早く言って、電話を切ったのだ。
・・・・・・・・。
人違いって・・・。
なんだそれ? ありえない。腹立たしい。
脳裏に浮かぶのは、もっさりとしたズウタイの、ぽちゃぽちゃとした
丸顔の奥に光る鋭い眼光の神戸君。
恋愛 について語っていた高飛車な態度を思い出す。
女性に対して、ヤツはいつもこういう態度なのだろうか。
5年前、彼にふられたからといって、
こんな”恋愛のコンプレックス”と”プライドの高さ”が
病的に入り混じっちゃったやつに
電話番号を教えてしまった自分が情けない。
ちょい上予備群の皆様
”暇だから”とか
”いい人だから”とか
”1%つきあう可能性はあるかもしれないから”
という理由でデートをするのは、やめたほうがいいですよ。