また梨の季節がやってきた。子供の時から好物であるのに加えて、リンゴやオレンジなど一年中ある果物が多い中、梨が店頭に並ぶのは決まった季節のときだけという期間限定感もあり、梨の季節は全力で梨を食べる。梨を一人で1個まるまる食べてみたいというのが小さい頃の私の願望の一つだった。一人暮らしをはじめてから梨の季節を迎えて早速、大玉の梨を2個買ってきて一気に食べたのだが、そのあとてきめんにお腹を壊した。梨の食べ過ぎは下痢をひきおこすらしい。
 子供の頃は、梨といえば長十郎か二十世紀しかなかったが、圧倒的に長十郎派だった。長十郎の方が固く、しゃりっとした食感が強くて、それがなんともいえない魅力だった。二十世紀は長十郎よりも甘いがちょっとやわらかすぎると思っていた。今は梨の種類が多く(幸水とか豊水とか新高とか)、なんだか毎年増えているような気がする。二十世紀はその中に混じって今でもあるが、長十郎はさっぱり見かけなくなった。たぶん、長十郎を今食べたら、固いだけで甘味が少ないと感じてしまうかもしれない。それだけ、今は甘味の強い梨が多くなったということだろう。贅沢になったと言うべきか。
 そういえば梨のお菓子もあまり見かけない。イチゴ味やオレンジ味やメロン味のチョコやシロップやクッキーやキャンデーはあるのに、梨味はまずめったにない。身近にあるのは「和梨のグミ」くらいだし、それも売り出されたのはごく最近のように思う。梨の魅力のほとんどは食感と水分にあるのだから、味だけをとりだしてみてもなんだかぴんとこないのではないだろうか。