私の部屋の飾り棚には犬がいます。
これは、私の宝物です。
さかのぼること、もうかれこれ15年ほど前の話…
私がまだ中学1年生だった頃
本屋で一目惚れして買ったインテリア系の写真集。
架空の部屋に住む住人をコンセプトにしたその本の中に
数匹の木彫りの犬が
「藤井さんの犬」という名前で写っていました。
なんとなく、その質感というか、差し込む光の写真というか
その1ページが、当時の私のお気に入りの写真でもあって
ずっとずっとその写真に写っている木彫りの犬が欲しかった。
そして、ある時、ふっと本の最後のあたりを眺めていたら
「藤井さんの犬」は完全オーダーメイドで長野県に在住している
アーティストの藤井敏雄さんが手彫りで制作していると書いてあり
連絡できるように制作工房のアドレスが掲載されていたんだ。
まだ中学生だった私だけど、決めたら行動するタイプの人間(笑)
すぐに連絡をしたら、喜んで制作しますよ~と。
「色とか模様とかのデザインを考えて教えて下さい」と。
当時、私には大好きな柴犬の愛犬「チコ」が家にいたので
犬種は違えど、耳がちょっと濃い茶色だった「チコ」をモデルに
デザイン画を書いて、藤井さんにFAXで送りました。
それから数週間経って「藤井さんの犬」は家にやって来ました。
プチプチのパッキンに梱包され、
アーティストの藤井さんが手て彫ってくれた犬。
木彫りの犬と一緒に同封されていた手紙には
長野県の八ヶ岳のふもとにある工房の外で、
雪解けの中、切り株に腰をかけ
愛犬のゴールデンレトリーバーと遊びながら楽しく制作しました。
という素敵なメッセージと共に
愛犬の「チコちゃん」がお腹を空かせないように作りました…
という文字の下に
木彫りの骨が、白い糸に繋がって手紙にくっついていました。
藤井敏雄さんの優しくて温かい人柄に感動して
なんともいえない温かい気持ちになった当時の私。
あの時の感動とか犬を見たときの興奮とか喜びとかは
もちろん今でもしっかり覚えてるし
「藤井さんの犬」は今でも宝物として大切に飾っています。
その後、藤井敏雄さんにお礼のお手紙と絵を同封して送りました。
「ありがとう。大切にしますね」と優しい藤井さん。
私は、木の持つ優しいぬくもりが好きです。
手にしたときに、ちょっと温かく肌に伝わる微妙な温度。
有機質な温度は、人間と何も変わらない自然の産物。
それを中学生だった私に、藤井さんの優しい人柄と共に
肌で感じさせてくれた大切な宝物でもあります。
iopon.