この作品は、『響け!ユーフォニアム』シリーズを元ネタにしたファンアート短編小説です。
(絵 ベッキー)
ステージの上でスネアドラムを叩く。
ドラムのリズムが全体の音楽をささえる。
そして、最後のフィニッシュ!
割れんばかりの拍手を受けて、
私の中学最後のコンクールは終わった。
中学校吹奏楽コンクール、全国大会金賞。
強豪校とは言え、金賞が取れない年もあった。
私がコンクールでレギュラーになったのは
中学二年から。
最初のコンクールは全国大会に進んだものの、
銀賞だった。
金賞を目指して叶わなかった先輩たちの悔し涙を見ながら、私は、
なぜ泣くんだろう。
こんなに楽しかったのに。
と思った。
私にとって大事なのは、音楽を楽しんで演奏すること。
自分の楽しさが演奏を通して聴く人に伝われば、それでいい。
そう考えていた。
大規模な吹部で自分の力を試してみよう、
そう思って入学した私立中学の強豪校。
親もよくお金を出してくれたと思う。
中学最後の年に金賞をとることで、音楽好きの両親には恩返しできたと思った。
私が音楽を始めたのは、親が推しのバンドのコンサートに私を連れて行ったのがきっかけだった。
バンドのドラムの響きに心がワクワクして、
自分もやってみたい❗️
と思った。
親はそんな私の願いを聞いてくれた。
私を音楽に導いてくれて、ありがとう。
そう親には感謝してる。
だから。
高校は公立にしよう。
それだけの理由で北宇治を選んだ。
北宇治の吹部はあまり強くないと聞いていたから、好きに音楽を楽しめそうかなと思った。
入部説明会に出向くと、パーカスには先輩が三人しかいなかった。
高校三年の男子の先輩は無愛想だったが、ほかのふたりの先輩女子は後輩にやさしいお姉さんでホッとした。
同学年の子は、赤いリボンのかわいい子と、短い髪の子。ふたりとも初心者のようだ。
ここなら、楽しく音楽できそう。
私の胸は高鳴った。
最初の年は思いもよらず全国大会に出場することができた。
結果は銅賞だったけど、とても楽しかった。
シンバルを打ち鳴らす快感に、心がしびれた。
二年目は関西大会止まりだったが、いい演奏ができたと思う。
どちらも、私からしたら、悔いのない大会だった。
そして、三年目。
今度こそ全国大会金賞!を目指しての出場。
最初の年に比べても、気合いの入れ方が違っていた。
その分、緊張感で部内はピリピリ。
特にドラムメジャーの高坂さんの情熱はハンパではなかった。
音楽は楽しむもの。音を楽しめ!
と、パーカス指導のさかもっちゃん(だって、そう呼べって…)には常日頃から指導を受けていた。
自分もそうだと思っている。
でも、高い目標を達成するには、これぐらいピリピリすることも必要なのかもしれない。
中学のときも、部内は結構ピリピリしてたなあ。
そんなことを思い出しつつも、パーカスのパーリーとしてはパートをまとめなくてはいけない。
部員の不満を聞きつつも、励ますことを忘れずに、モチベーションを保つ。
同級生の万紗子までがピリピリするようになったのには驚いたが、抑えるばかりでもいけないと、好きにさせた。
結果的には部長の久美子が本音をみんなにぶつけて、みんなも納得した。
さすが、部長。
私にはあそこまでできないな。
どこかで冷めている自分を感じていた。
・・・
全国大会金賞。
やったね、みんな。
どこか他人事みたいに達観してる自分を感じつつも、みんなが喜ぶ姿を見るのはとても嬉しい。
私も楽しかったな。
いつもそうだけど。
私の音楽への基本姿勢はブレない。
変わらない。
演奏して自分が楽しむこと、お客さんが楽しむこと。
シンプルにそれだけが重要なのだ。
高校三年で転校してきた、ユーフォ担当の真由ちゃんも同じようなことを言ってたっけ。
私の高校吹部生活は全国大会で幕を引いたが、
(実際には卒業旅行を兼ねた演奏旅行はあったが)
私の音楽への情熱は消えたわけではない。
大学ではいよいよ憧れてたバンドのドラム奏者になろう。
そう心に決めていた。
先輩のバンドの応援をしながら、ソロで路上ライブ活動を始めた。
最初はおっかなびっくりだったが、やり始めるとクセになる楽しさがあった。
さあ、今日も私の音を響かせよう‼️
了