劉備玄徳が一皮むけたのは、曹操の軍から民衆を連れて逃げて、長坂(チョウハン)と呼ばれる長い坂をのぼり、橋を切って関羽の水軍と合流するあたり。

多くの民が曹操を恐れ、劉備についていくことを選んだとき、彼の中でなにかが変わった。

劉備の部下も歴史に名を残す大活躍をした。

しんがりとなり、曹操軍の猛追を牽制した張飛。

戦場に残された劉備夫人と後継となる赤ちゃん(のちの劉禅)を死地から救い出した趙雲。

こうした頼もしい部下の活躍もあり、劉備はなんとか逃げおおせたとも言える。

マンガ『蒼天航路』は三国志マンガとしては曹操を主人公とした異色の作品で、名作だが、
このシーンで劉備が生まれ変わり、天下人になる描写がとてもユニークに描かれていた。

彼は天下人のみが語れる将来の中国のビジョンを語り、敵将をも驚かせたのだ。

これはもちろん、史実ではないが、原作者がインスピレーションを受けて描いたもの。
だからこそ、とても心が震えるシーンとなっている。

自分の大きな使命に気づき、逃げることなく受け止め、挑戦する覚悟を語る。

まさにその瞬間、劉備は生まれ変わったのだ。

そして、それは私たちにも起こり得ることなのだ。