前の話

 

 

 


産屋が崩れ去ると、あとには消し炭が残るばかりだった。

サクヤヒメ⁉️
サクヤァーッ❗️

ニニギくんは、絶叫するが、返事はない。

なんて、なんてバカなことを…。

ニニギくんは、その場にくずおれて、嗚咽するのだった。

いや、バカはぼくの方だ。
サクヤヒメの言い分をもっとちゃんと聞いていれば、このようなことにはならなかったろうに。
ぼくは、なんと浅はかだったのだろう。
いまは、サクヤヒメの残した言葉が身に染みる。
こんなぼくは、王にはふさわしくないのではないだろうか。

そうして、自分を責め始めるニニギくんに、御一行様の誰も、かける言葉が見つからないのだった。

そこに、オオヤマツミが前にヅカヅカヅカと
でてまいると、

おお〜い、サクヤよ、もうこの辺で出てくるがよい。ちと、薬が効きすぎたようじゃ。

すると、か細い声で、

はァーい

と返事がしたかと思うと、

産屋の床下がバンッと開いて、

サクヤヒメの手がちょいちょいと手招きするのが見えた。

あっけにとられているニニギくんの前をユウゼンと通り過ぎ、

オオヤマツミは地下からなにやら受け取った。

それは元気な男の赤子であった。

ひーふーみー

都合、三人の男の赤子を順番に受け取ったあと、

最後にサクヤヒメが上へと引き上げられたのだった。

これが、サクヤ流、火遁(かとん)の術でございます。

顔を炭だらけにしたサクヤヒメはそう言って、にっこり笑った。

続く

 

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