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ニニギくんの言葉の暴力にひたすら耐えるサクヤヒメ。
その胎内では三人の胎児がわらわらと羊水内を動き回っていた。
胎児には魂がそれぞれ乗っかっていて、魂同士で交信することができる。
三人は母親の危機を敏感に察知して、テレパシーで話し合いをしていた。

ねえ、この言霊の波動、ひどくね?
これが父上かと思うと、引くわー。

典型的なダメンズだよね。
なんでこうなったのかなー。

母上も言い返したらいいのに。
あっ、でも売り言葉に買い言葉になるのもよくないのか。

暗い言霊の波動の応酬は不毛だからなあ。

ともかく、母上の心が汚染されないよう、守らねば。

三人は必死にお祈りして、母親に愛の波動を送るのだった。

お母さん、大好き❤
ぼくたちがついてるからね、大丈夫だよ。

お母さんはなにも悪くないよ。ぼくたちを守ってくれてありがとう。

お父さんの誤解は、間違ってるだけだよ。ぼくたちが無事に生まれることで解決できるから、安心してね。

サクヤヒメは体内から生じるあたたかい波動に癒された。
そちらに意識を向けると、ニニギくんの言葉も遠くに聞こえ、右から左へと流れていくのだった。

そうだ。この子たちのためにも、わたしがしっかりしなければ。

気を取り直したサクヤヒメは、くるっと旋回すると、ニニギくんのほおにビンタをかましたのだった。

パアンッ❣️

大きな音があたりに鳴り響き、
みんなが固唾を飲んだ。

続く


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