比較的大きな部屋に通されて、サクヤヒメとイワナガヒメは並んで座り、そのかたわらにオオヤマツミがどっかりと腰を下ろした。
やがて、ニニギくんが部屋に入ってくると、上座に座った。
二人の姫はお辞儀をして、微動だにしない。
どっちがあの子なんだろ?
もうひとりは側女(そばめ)かな?
ニニギくんは、あまり深く考えず、
面(おもて)を上げよ❣️
と言った。
最初が肝心だからな、威厳のあるとこを見せないと。
ニニギくんは、二人が顔を上げるのを見守った。
ひとりは期待どおりの美しい姫であった。
ニニギくんの想い人。
二人は目を合わせると、互いに会釈を交わした。
もうひとりの方をチラ見すると、サクヤヒメほどの器量はないが、真面目そうな顔の姫だなと感じた。
オオヤマツミは、オホンと咳をすると、
これなるふたりは、ともにわが娘であります。
これからはふたりが殿にお仕えし、殿を末長く支えることでしょう。
と奏上した。
なに、それ?
聞いてないんだけど。
やや驚いたニニギくんは、部屋のかげに隠れて様子をうかがっている家来の面々の方をチラッと見た。
家来の面々は顔を見合わせて、
いや、聞いておりませぬ、知りませぬ。
と身振り手振りで伝えた。
どうもオオヤマツミの独断であるようだ。
もしかすると、もうひとりの姫はオオヤマツミの手のもの、スパイかもしれんな。
そう断じたニニギくんは、その手に乗るか!と立ち上がり、サクヤヒメの手をとると、
さあ姫、今宵はわれとともに過ごそうぞ。
と言って、手を引いて部屋を出て行こうとした。
自分が無視されていると感じたイワナガヒメは、表情には出さずに二人を見送ろうとした。
部屋を出るまぎわ、ニニギくんは、イワナガヒメを一瞥(いちべつ)し、
お前はいらね❣️
と吐き捨てるように言うと、部屋を出ていった。
続く