☆シリーズ神様の教室より
『悪魔くんと天使くん』

ここは、神様の教室です。
神様の子供たちが、
みんなで楽しくおしゃべりしています。
どんなお話をしているのかな?
聞いてみましょう。

「ねえねえ、みんな違って、
みんないいんだよね?」

「うん、そうだよ。みんな一人ひとりが、神様に与えられた個性を持っているんだよ。それは、宇宙に二つとないものなんだ。」

「そっかあ、みんな違って、当たり前なんだね!」

そこへ、悪魔くんが登場。
悪魔くんは、いじめっ子で、みんなから嫌われていました。

あれれ、ここは、神様の教室のはずなのに、なんで悪魔の子がいるのかな。

もうすこし見てみましょう。

「おい、俺も仲間に入れてくれよ。」

「あ、悪魔くんだ。いつも、みんなをいじめて、悪さばかりするんだ、いやだなあ。」

「おい、なんで俺をのけものにするんだよ。みんな違って、みんないいんだろ。俺も仲間に入れろよ!」

悪魔くんが強引にみんなの輪の中に入ってきました。

みんな、困った顔をして、黙ってしまいました。

「なんだよ、なんで黙るんだよ。
みんな仲間で、友達なんだろ?
俺と一緒に遊べないやつは、いじめてやるぞ!」

悪魔くんは、そう言って、拳を振り上げました。

その時です!

「悪魔くん、やめなさい!」

と言って、さっそうと登場したのは、この教室のリーダーの天使くんです。

悪魔くんも、この天使くんだけは苦手で、天使くんの前だと、おとなしくなってしまいます。

「な、なんだよ。なんか、文句あるのかよ!」

悪魔くんは、身構えて、そう言いました。

天使くんは、悪魔くんに言いました。

「悪魔くん、みんなと楽しく遊びたいなら、みんなを脅したり、暴力をふるってはいけないよ。
そんなことをするから、みんなに嫌われるんだよ。
みんなと仲よくしたいなら、まず、自分がやさしくならないと。」

天使くんの言葉に、教室にいるみんなが、そうだそうだと、相槌を打ちます。

悪魔くんは、ヘン!と鼻で笑って、

「なかよしクラブなんて、ちゃんちゃらおかしいや!
この世で信用できるのは、自分だけさ。俺は別に一人でも平気なんだ。
お前らだけで仲よく遊べばいいさ!」

と、吐き捨てて、教室を出て行ってしまいました。

悪魔くんと仲のよい、何人かの子も、あとを追うように、教室を出て行きました。

天使くんは、悲しそうな目で、悪魔くんが教室を出て行くのを見守っていました。

天使くんのまわりに、教室に残った子が集まって、口々に言いました。

「悪魔くんて、どうしていつも、ああなんだろうね。」

「強がってるけど、ほんとはみんなと仲よくしたいんじゃないのかな?」

「あんなやつ、嫌われて当然だよ。もう学校に来なければいいのに。」

悪魔くんにいつもいじめられている子が、そうポツリと言いました。

みんな、シーンと黙ってしまいました。

しばらくして、別の子が、

「でも、ここは神様の子供たちが集まる教室だよ。
悪魔くんだって、神様の子供で、僕たちの仲間なんだ。
ひとりぼっちでいいと思っているはずはないよ!」

と言うと、みんな、うんうんとうなずきました。

天使くんは、

「そうだ、そのとおりだ。
悪魔くんだって、最初から、ああだったわけじゃない。
生まれた時は、ピカピカの赤ちゃんだった。
成長してからも、誰よりもかしこくて、誰よりもかっこよくて、みんなの人気者だったんだ。
ただ、みんなからチヤホヤされて、いい気になってしまって、だんだんまわりの人を見下すようになってしまった。
自分が世界で一番エライと思い込んでしまったんだ。
僕は、小さい頃の彼を知ってる。
その頃の彼は、ああじゃなかったよ。
誰にでもやさしい、いいやつだったんだ。
僕は、彼が早く自分の間違いに気づいて、あの頃のやさしさを取り戻すのを待っているんだ。」

「そうだね、待つことも愛だと教わったよ。
長く、苦しいことかもしれないけど、信じて、待ち続けることも、大切なことだよね。」

「そうだよ、ここは神様の教室で、愛を学ぶためにみんな集まっているんだから、とびっきりの愛を経験したいなあ。
そのために、悪魔くんも憎まれ役を演じてくれているんだよ、きっと。」

誰かがそう言うと、

「うん、そうだね。」

と、天使くんは、少しさびしそうに笑って言いました。

悪魔くんが本当の自分らしさを取り戻すのは、いつのことなんでしょうか…。

おしまい