【父と娘の物語】
父は娘の幸せを願うものだが、
その人生の選択は娘に任せなければならない。
これは、そういうお話。
あるところに、父と娘がいた。
父は娘をたいそうかわいがり、
娘も父になついていた。
娘は成人すると、ある男を好きになった。
二人は相思相愛になったが、
父から見ると、娘にはもっと条件のよい縁談があるのではと反対した。
娘はとても悲しんだ。
父を恨みさえした。
父は頑固で、決して娘の説得に耳を貸そうとしなかった。
ところが、そんな父が病気になり、入院してしまった。
娘は献身的に介護をした。
そんな女を見ているうちに、父のこころに変化が起こった。
父は娘の結婚に同意したのである。
無事に退院したあと、父が家族に語るには、
『私は娘の行く末を案じて結婚に反対していた。
娘にたとえ恨まれても、譲る気持ちはなかった。
嫌われても仕方ないとさえ、思っていた。
だが、娘が病気の私を毎日見舞いに来てくれた。
献身的に付き添ってくれた。
そんな娘の姿を見ていると、娘の本当の幸せとはなんだろうかと思うようになった。
私が結婚に反対することで、娘を不幸にしているのではないか、と。
私の回復を願ってくれる娘の思いはわたしに届いた。
今度はわたしが娘を幸せにする番だ。
それで結婚を承諾することにしたのだ。』
この話を聞いて、愛は人の頑なな心をも溶かすのだ、と思った。
どっとはらい