【エルフィーの白日夢】


エルフィーはうつらうつら、夢をみる。

あたりは戦場で、小さな女の子が泣きながら両親を探している。

「パパァー、ママ…」


ヒュンッ!


何かが女の子の身体を貫き、パッタリと倒れる。


女の子の身体からタマシイが抜けていき、


大きな女性のかいなに抱かれる。


女の子は目をこすりながら、


「もしかして、おばあちゃん?」


と聞くと、


大きな女性の姿は初老の女性の姿になり、


「おや、よくわかったねえ。」


と女の子の髪をやさしくなでる。


「うん、なんとなく、わかったの」


そう言って、女の子はおばあさんに抱きついた。


「かわいそうにね。こわかったろう。でも、もう大丈夫。


こちらの世界には戦争はないからね。」


女の子の頭をなでながら、おばあさんがやさしく言うと


女の子は、


「ねえ、パパとママはどこ?」


と聞いた。


「パパもママもこっちの世界に帰ってきているよ。


さっき、迎えに行ってきたんだよ。連れてってあげようね。」


おばあさんは、女の子の手を引いて、歩いていった。


ほどなく女の子は、両親と再会することができた。


「エルフィー!」


と女の子を呼ぶ両親。


(え、わたし…?)


とエルフィーは驚いた。


なんとなく、女の子がもう一人の自分ではと感じてたので、


違和感はなかったが、


女の子を抱きしめる両親の姿を見ていると、自分の両親のように


感じられた。


二人とも人間の姿をしているが、タマシイは…。


おばあさんは、


「これからは親子水入らずでしばらく過ごすといい。


大変な人生だったね。ご苦労さん。」


と親子三人をねぎらった。


「いま、地上の世界は人々の心がすさみ、荒れておる。


その中で愛ある家庭を築くことは難しいかもしれんが、


愛ある家庭では愛の心が育まれるんじゃよ。


そういう家庭を増やすことで、サツバツとした世界に


愛の種をまく人を増やすこと。


あなたたちの使命のひとつはそれじゃった。


志なかばでこちらの世界に帰ってきてしまったが、


それもやむを得ん。


だが、われらは創造主である宇宙の神より愛されし存在。


永遠のイノチを与えられしもの。


戦争は肉体の生命を奪う、忌まわしき愚行じゃ。


だが、地上の人びとがタマシイが永遠なることを


知れば、戦争などしなくてよいとやがて気づくじゃろう。


われわれは、そのことを地上の人びとに繰り返し


伝えに行かねばならん。


あきらめずにのう。」


そう言うと、おばあさんは、輝く大きな水色のエナジーになって、


三人をやさしくつつんだ。


エルフィーはその光景を見て、


(なんてきれいなんだろう)


と思った。


そうして、ハッと目を覚ますと、


いつものアパートの一室で、


窓辺に頬杖をついて眠りこけていたのだった。


(そうよね、人は死んでも、それで終わりじゃない。だから、大丈夫なんだ。)


そう思うエルフィーのほほを


春の風がやさしくなでるのだった。


2022.3.6

よっくる