今日は立春ってことで、
続編構想中のエルフィーシリーズより、
桜にちなむエピソードを紹介するね。

【さいた神社】

わたしはエルフィー。

わたしの住むアパートの近所にある、さいた神社は、桜の名所らしい。

森の学校のあるところには、サクラがなかったが、
授業で、ニッポンという国に、春になるとたくさんの小さな花が咲きほこる木がある、それがサクラと教わった。

冬の今はまだ咲かないらしい。
つまり私がここにいる間は咲かないってことだ。

ううーん、残念。

でも、この神社に散歩に来ると、聞こえてくるんだ。
この村に住んでた人びとの笑い声が。

ああ、きれいだね。きれいだね。

楽しいね、楽しいね。

子供たちの笑い声やはずむ声、歌声なんかもキコエテクルよ、わたしの耳に。

そして、今は枯れている枝に、
薄桃色の花々が咲き、
風とともに散ってゆく様子が
まぶたのうらに浮かぶのだ。

そーよそよそよ
そーよそよそよ

春風吹くな

もうちょっと咲かそ

私の指先にサクラの花びらがひとつ

ひらひらと舞い降りて、くっつくのが見えた。

そっかあ。
サクラがいっぱい咲くから、
さいた神社なんやね? おっとう。

そんな女の子の声が、ふいに聞こえてきた。

わたしの目には、うっすらと

花かんむりをつけた女の子が笑顔で境内を駆け回ってるのが見えた。

男の子が女の子を笑いながら追っかけている。

鬼ごっこ?

この場所がむかしあったことを記憶してるんだね。

楽しかったことの記憶を、この場所が大事にしているのかな。

わたしは、ますますこの場所が好きになった。

ああ、またいつか、桜の芽吹く季節に、この場所に来てみたいな。

とりあえずは、毎日のお散歩コースに、ここを通ろうと決めるのだった。