【コウモリの涙】


皆さんは、夕暮れの空に

たくさんのコウモリが

群れをなして飛んでるのを

見たことがあるでしょう。


なぜ、コウモリは

あんなにたくさん、

群れをなすのでしょうか。


これは、そうなったわけを

教えてくれる物語です。


・・・


むかし、むかし

あるところに

コウモリがいました。


コウモリは、

ネズミの体に

鳥のつばさを持ち、

ネズミの友達のところに

遊びにいったり、

鳥の友達と遊んだりして、

過ごしていました。


あるとき、

コウモリが鳥の友達と一緒に

遊んでいるところを

ネズミの友達に見られてしまいました。


ネズミの友達は

コウモリに言いました。


「君はどうして鳥なんかと

遊んでいるんだい。

鳥は空から僕たちを襲う

嫌なやつさ。

僕たちの敵なんだ。

君は鳥の仲間なのか?」


コウモリは、

あわてて、言いました。


「いやいや、僕は

君たちと同じ仲間だよ。

この体を見てごらんたまえ。

君たちにそっくりだ。」


ネズミの友達は言いました。


「なるほど、確かにそうだ。

ごめんよ、疑ったりして悪かった。

でも、もう鳥とは付き合うなよ。

鳥は僕たちの敵なんだ。

君だって、いつ食べられちゃうか、わからない。」


「うん、わかった。そうするよ。」


コウモリは、困った顔で言いました。


また、あるとき、

今度はネズミの友達と遊んでいるところを

鳥の友達に見られてしまいました。


鳥の友達は

コウモリに言いました。


「君はどうしてネズミなんかと

遊んでいるんだい。

ネズミは地べたを這いまわり、

僕たちのエサを横取りする

嫌なやつさ。

僕たちの敵なんだ。

君はネズミの仲間なのか?」


コウモリは、

あわてて、言いました。


「いやいや、僕は

君たちと同じ仲間だよ。

このつばさを見てごらんたまえ。

君たちにそっくりだ。」


鳥の友達は言いました。


「なるほど、確かにそうだ。

ごめんよ、疑ったりして悪かった。

でも、もうネズミとは付き合うなよ。

ネズミは僕たちの敵なんだ。

君だって、いつエサを盗まれるか、わからない。」


「うん、わかった。そうするよ。」


コウモリは、困った顔で言いました。


コウモリは、どちらの友達とも遊べなくなってしまいました。

孤独になったコウモリは、

さみしくて、泣きながら、神様に向かって言いました。


「ねえ、神様。

どうして僕をこんなふうにお作りになったの?

僕は、ネズミならネズミ、鳥なら鳥に生まれた方がよかったな。

そうすれば、どちらかの友達と遊んで暮らせるのに。」


神様はコウモリにやさしくささやきかけました。


『コウモリよ。コウモリ。

勘違いをするでない。

あなたは、あなたで素晴らしいのだ。

ネズミと鳥は、お互いを敵と見なして、いがみあっているが、それは私の望むところではない。

私は、ネズミと鳥が仲間として仲よく暮らしてほしいと願っている。


実は、君の役割もそこにある。

君は、「つなぐもの」として、私が創造したのだ。

ネズミの体を持ち、

鳥のつばさを持つ君は、

両方のいいところがわかるだろう。

君には、ネズミと鳥の仲を取り持ち、

いさかいのない世を作る手伝いをしてほしいのだ。

君は、そんな使命を持ち、私につかわされた使者なのだ。

とても大事な役割を背負っているのだよ。』


コウモリは、神様の言葉に感動して、言いました。


「神様、ああ神様、

ありがとうございます!

そんな大切な使命を与えてくださってるなんて、知りませんでした。

私にできる役割を果たしていきたいと思います。

でも、ネズミさんと鳥さんを仲直りさせるのは、すごく時間がかかりそうです。

それまでの間、私は孤独なのでしょうか?」


神様はコウモリに言いました。


『コウモリよ、コウモリ。

あなたは一人ではない。

あなたには仲間がたくさんいるではないか。

仲間とともに歩みなさい。』


見れば、夕暮れの空に仲間のコウモリたちがたくさん飛んでいるのが見えます。


「ああ、僕の仲間があんなにたくさんいるなんて、知らなかった。」


神様はコウモリに言いました。


『彼らもまた、つなぐ使命を果たさんと、毎日がんばっているのだ。

だが、うまくいかず、疲れたときには、ああして仲間同士集まって、お互いを励まし合っているのだよ。

さあ、お前も、あの輪の中に入りなさい。

仲間たちの友情が、お前の孤独を癒してくれるだろう。」


コウモリは、喜び勇んで、仲間の群れの方へ飛んでいきました。


それで、コウモリは、夕暮れになると、仲間同士、群れて飛んでいるということです。


どっとはらい。


     よっくるo(^▽^)o