にこやかに笑う白銀の髪のオババ。
オババ ようきた、こっちきんさい。
ヒッコリ おばあちゃん、きょうはどんな物語読むの?
オババ そうさなあ、うちゅうのはじまりの話じゃ。
むかし、むかし、あるところに、おっきな魔物がおっての、宇宙を飲み込んでしまいそうになったんじゃ。
それを白い魔法使いが自らの身を犠牲にして、魔物もろとも、こなごなにふきとんだ。
それが、前の宇宙の終わりじゃよ。
ヒッコリ 前の宇宙?
オババ そうじゃ。前の宇宙じゃ。そのあと、なにもない状態がしばらくの間、続いたんじゃがの、なんにもないところに、ポッと光がさしたんじゃ。光はまたたくまに四方八方に広がった。それが新たな宇宙、つまり今の宇宙の始まりなんじゃ。
ヒッコリ 最初はひかりからはじまったの?
オババ そうじゃよ。最初にひかりありきなんじゃ。やがての、ひかりの中から闇が生まれ、さまざまな星々が生まれた。色とりどりに輝く星々がの、それはそれはきれいにまたたくんじゃよ。
ヒッコリ 夜空のお星様よりもきれい?
オババ そうじゃ、夜空の星のつぶをひとつ大きくしただけでも、そこに数々の星の輝きを見る、といった具合にの。わしらが見る夜空の星は広大な宇宙のほんの一部にすぎないんじゃよ。
ヒッコリ ふうん、そうなの。おばあちゃん、わたし、大きくなったら、その星まで行けるかな。だって、見てみたいもの。
オババ わしらは大きくなっても、この大地からはなれては生きられぬ。大地に根をはり、生きていく、それがわれらの定めなんじゃよ。
ヒッコリ なあんだ、つまんないの。
オババ おまえが生まれる前にいた世界はの、あの星々のどこかひとつかもしれんぞえ。
ホーッホッホ。
ヒッコリ へんなおばあちゃん。
おしまい