【帰ってきた一寸法師】

 

 

 

(前回までのあらすじ)

 

姫を小人にしてUFOに拉致した一寸法師は一体どこへ行くのであろうか。

 

 

一寸法師はUFOを光速で走らせると、瞬く間に宇宙ステーションに到着した。

 

これより先は検査官のチェックをクリアしないと先に進めない。

 

悪党どもの金銀財宝をせしめたものの、検査官に見つかると、どうしようもない。

 

さて、どうしたものか、と首をかしげる無計画な一寸法師なのであった。

 

姫は見る物すべてが珍しく、きゃあきゃあ騒いでいる。

 

一寸法師は名案も浮かばぬまま、姫を連れて宇宙ステーションの受付に出頭した。

 

 

「あのう、母星に帰りたいんだけど。」

 

 

そう切り出す一寸法師。

 

 

受付の女の子は豆粒のような二人を虫眼鏡で確認すると、画面を操作して何やら表示されたものに目を通し、

 

 

「あなたたち、三番テーブルにご指名よ」

 

 

と一寸法師に行き先につながるドアを指し示した。

 

一寸法師と姫がドアの前に立つと、プシュとドアが開き、二人は三番テーブルに瞬間移動した。

 

そこには別の女の子が二人を待っていた。

 

二人と同じ背恰好で、一寸法師は同じ星の仲間だと思い、少しほっとした。

 

 

「はあい(^^)/  私はサラ。あなたたちの担当よ。ようこそ、宇宙ステーションへ!」

 

 

サラはそう明るく挨拶すると、二人に握手を求めた。

 

最初は一寸法師が握手し、次に姫が見よう見まねで握手した。

 

 

サラは姫にウインクすると、二人に着席するよう促した。

 

 

二人が椅子に座ると、椅子はフカフカのベッドのように二人の身体をやさしく包み込んだ。

 

 

「ここは異次元空間の三番テーブルよ。

 

だからお互いの身長差や言葉の違いなど、

 

気にせずにお話しできるから安心してね。」

 

 

そう言うと、サラはもう一度ウインクして見せた。

 

 

一寸法師は、同じ星の仲間じゃないのかと少しがっかりした。

 

 

「さて、あなた、地球では一寸法師と呼ばれていたわね。あなたの愛の度数を測定すると、地球に行く前に比べ、かなり数値が落ち込んでいます。なぜだかわかる?」

 

 

一寸法師はドキッとした。

 

心当たりがあり過ぎる。

 

 

「うーむ、なんのことやらわかりませぬなあ。」

 

 

そう言ってしらばくれると、

 

 

「地球の人たちの悪いとこに影響されたみたいね。地球はまだ次元波動が低いから仕方ないけど。」

 

 

と言われ、さらにドキッとした。

 

 

(なんだかこの子は何でもお見通しみたいだな。これは下手に隠しごとしないほうがいいかも)

 

 

そう思っていると、姫が、

 

 

「いえ、この方は私を悪党から救って下さったんです。命の恩人です!」

 

 

とフォローしてくれた。

 

 

サラは画面にさっと目を走らせると、

 

 

「そうね、確かに姫を助けた時に愛の度数が少し上がってるわ。

 

    悪党をこらしめにいこうと決意したのも善意からだものね。

 

    でも、悪党を追っ払ってからがいけないのよ。」

 

 

と冷静に分析した。

 

 

一寸法師は、またもやドキッとした。

 

 

「悪党が集めた宝物は元の持ち主のところに返した方がよいかもしれないわね。

 

返さない方がよい場合もあるけど。」

 

 

サラがどっちつかずのことを言うので、てっきり持ち主に返しなさいと叱責されると思っていた一寸法師は、見当がはずれ、困惑した。

 

 

姫は、

 

 

「あら、でも一寸法師様はよいことをなさったのだから、戦利品をもらうのが当たり前じゃないかしら。

 

大人はみんな、そうしているわ」

 

 

とフォローにならないことを言う。

 

 

サラは冷静に、

 

 

「そうね、確かにあなたの星ではそういう価値観が常識だわ。

 

でもね、宇宙の星々ではね、奪い合いを正当化する価値観は少数派なのよ。

 

多くの星はね、分かち合い、与え合う価値観になっているのよ。」

 

 

と言った。

 

 

一寸法師は、

 

 

「確かにそうだ。

 

僕たち小人の星でも、人から奪うなんてことは思いもよらないな。

 

僕たちの星は資源が豊かにあるし、僕たちはこびとだから、あまり多くを必要としないんだ。

 

僕はあの宝物の山を見て、誰のものだなんて考えもしなかった。

 

ただきれいだから、星のみんなに見てもらいたかっただけなんだ。はい、これホント!」

 

 

と弁解するのだった。

 

 

サラは、くすっと笑って、

 

 

「確かにあなたに悪気がないのは本当ね。

 

あの星にはものを所有するという価値観が根づいて久しいの。

 

だから、みんな、自分の物を増やすのに夢中なのよ。

 

あなたの星のようにみんな足りていることを知っていれば、そんな価値観は選択しなかったと思うけど、不足していると思い込んでしまったのね。分離の状態を学んでる星だから仕方ないけど。」

 

 

と言って、一寸法師の瞳をじっと見つめた。

 

 

明るくてかわいいサラの瞳に見つめられて、

 

一寸法師はドキドキ胸が高鳴ったが、姫はそんな一寸法師が面白くない。

 

 

(なによ、すぐデレデレしちゃって。

 

これだから、男って嫌なのよね)

 

 

サラは姫の様子を敏感に察して、

 

 

「まず女の子を地球に送り届けること。

 

地球の人をあなたの星に連れ帰るのは宇宙連合憲章で認められていません。

 

事前に許可を得ていれば別だけどね。

 

許可はとった?」

 

 

ふるふると頭をふる一寸法師。

 

その様子がなんだかかわいらしくて、姫はぷっと吹き出してしまった。

 

 

「正直でよろしい。

 

次に、持ち帰った宝物を売って、貧しい人に必要な物に変え、分かち合うこと。

 

持ち主に返してもいいけど、持ち主はどうも強欲なお金持ちが多いみたいだから。

 

お金持ちは貧乏な人を働かせてお金を稼いでるのよ、地球という星ではね。

 

だから、そのお金も、元をただせば、貧乏な人が汗水流して一生懸命働いてるおかげなの。

 

だから、貧しい人に返してあげるのは自然の法則にかなっているのよ。あなたがその役割を、お金持ちに代わってしてあげるの。どう?」

 

 

一寸法師は、ポンと手を打って、

 

 

「そうか、わかった!

 

地球ではみんなお金を持ちたがる。

 

お金を持ってれば、いつでも好きな時に好きなものが買えるから、

 

安心なんだ。

 

でもお金自体は持ってても何の価値も生まない。

 

ものやサービスと交換して初めて人の役に立つ。

 

だから、世の中に循環させることが大事なんだ。

 

宇宙をめぐっている愛のエナジーと同じで、

 

ひとつのところに停滞すると死んでしまう。

 

本来の機能を果たせなくなるから。」

 

 

サラはにっこり笑って

 

 

「そうよ、よく気づいたわね。

 

お金も使い方を間違わなければ便利な道具になるの。

 

お金自体に善悪はなくて、使い方次第なのよ。

 

それを今の地球では学べるってわけ。」

 

一寸法師は

 

「そうとわかれば、やるべきことは一つ。

僕は地球に戻って、財宝をお金に換えて、姫と一緒に貧しい人に配って歩くよ。」

 

「私も一緒に?」

 

と驚く姫。

 

「そう、君と一緒に。一緒に来てほしいんだ。来てくれるね?」

 

一寸法師のりりしい姿に姫はぽっと頬を赤らめ、

 

「・・・はい、お供します。」

 

と答えた。

 

サラは満足そうに二人をニコニコと見守るのだった。

 

次回予告:

姫とともに、地球に帰った一寸法師を待ち受ける運命とは?

次回は「一寸法師よ、永遠に」。

カミング・スーン!?

 

次回のリンク先はこちら。

http://ameblo.jp/yokkurutani/entry-12265092937.html

 

 

 

 

 

 

(o^^o)