【鈴虫の楽隊】


リンと、鈴の音がした。

リンリンと、鈴の音がした。

リンリンリンと、鈴の音がした。

鈴の音の大合唱。

秋の世のコンサート。

鈴虫の楽隊の演奏は、

秋の夜長を彩る、音の芸術。

鈴虫の楽隊の指揮者は、私。

私は、鈴虫の音色に合わせて、

指揮をする。

鈴虫が私の指揮に合わせて演奏しているかのように。

私は、指揮棒を振り続ける。

すると、不思議なことに、指揮者と楽隊がまさに一体となったかのような瞬間がおとづれる。

私は、鈴虫の演奏と溶け合って、その中で指揮棒を振る。

すると、不思議なことに、鈴虫の演奏が、私の指揮に合わせて奏でられるのだ。

私と鈴虫たちだけの、静かで、騒がしい演奏会。

私の大事なあの人のところに、届きますように。

後日、素敵な演奏でしたねと、あなたからの手紙。

いつ、どこで聞いていたかと、当惑しながら、

牛車を走らせ、あなたのもとへと駆けつける、秋の夜。

いつも不思議語りをするあなたの話を楽しみに、

横笛をたずさえて、私は行く。

あなたの庭にも、鈴虫の楽隊が待っていますように。


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