【あるバレリーナの生涯】


(この物語を、マーゴット・フォンティーンに捧げます)


ある老女が、極楽いすに座りながら、古ぼけた書籍をひもといていた。

そこには、彼女が生前、送った人生模様が書かれているのだった。

読み進めるうち、不思議なことに、彼女の姿は、若い娘になり、

くるくるとバレリーナのように踊り出すのだった。

そう、彼女の人生は、世界的に活躍したバレリーナの人生。

バレエを通して、芸術の素晴らしさを、自分の一生をかけて表現するのが、彼女の使命だった。

そして、それをやりとげて、彼女はここに帰ってきたのだった。

彼女の踊りに合わせるかのように、たくさんの妖精達が現れ、

彼女とともに、彼女のまわりをくるくると踊る。

そのさまは、たいそうかわいらしく、また美しいものだった。


「私たちは、あなたが舞台の上で踊っていたときも、

 こうして一緒に踊っていたのです。

 あなたは気づかれていましたか?」


妖精達の問いに、彼女は、笑って、

「はい、気づいていましたよ。

 私が無心になり、踊っている時には、

 必ずあなたたちがそばに来て、ともに踊ってくれているのを

 感じることができました。」

と答えた。

妖精達は、きゃあきゃあ言いながら、喜んで跳ねまわった。

すると、彼女の背中にも妖精のような羽根がはえ、

妖精とともに楽しく踊り明かすのだった。



彼女は、妖精の女王だったのかもしれませんね。


      おしまい