【徐福伝説 ~黄金の国ジパング~】

 

 

 

 

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徐福は、始皇帝の命を受けて、

船にたくさんの人夫と金銀財宝を積み、海に船出した。

 

「徐福よ、必ず不老不死の仙薬を入手するのだぞ。

そのためなら、いくらでも金を出そう。

わが覇業完成のためには、この命、できる限り永らえねばならぬ。」

 

「は、この徐福、命に替えてでも、不老不死の妙薬を陛下にお届けいたしまする。」

 

そう言ってはみたものの、手がかりは東方の島国の噂話ばかり。

 

その島国には、黄金でできた王国があり、そこに住むものは、幸福に満ち足りており、不老不死なのだという。

 

そんな噂話をうっかり語り草にと始皇帝に話したばかりに、真に受けられ、そこに行くよう命令されてしまった。

 

(やれやれ、困ったことだわい。

じゃが、黄金の国とはいかなるものか、見てみたいものじゃ。

もし、噂通り、黄金があるのなら、それを持ち帰れば、陛下もお許し下さるじゃろう。)

 

徐福は、大船団を編成し、東の島国を目指した。

 

東の海原(東シナ海)は、荒れ狂うこと、ジエットコースターのごとく、多くの船が波に飲み込まれた。

そんな魔の海を越えるのは、まさに命がけであった。

それに、その海域には海賊が出没し、徐福の船団を襲った。

徐福の大船団は、嵐にあい、海賊に襲われ、一隻、また一隻と姿を消していった。

最後に残ったのは、ほんの数隻だけであった。

 

しかし、大きな犠牲をはらったかいあって、その数隻は東の島国に辿り着いた。

 

船を岸につけると、徐福たちは陸に上がり、調査を行った。

 

人々がどんな暮らしをしているのか。

どんな産業を興しているのか。

中国との違いはなにか。

そして、黄金や不老不死の妙薬は、本当にこの島国にあるのか。

 

あるところは、漁村であり、漁をして暮らしていた。

あるところは、ひなびた農村で、野菜などの作物を作っていた。

あるところは、商業がさかんで、人々は活気にあふれていた。

  徐福たちが持っていた中国の品々は大変な高値で売れた。

あるところは、山や川しかなかったが、自然がとても美しかった。

 

訪ねる場所それぞれに、中国にない不思議な魅力があった。大陸と違い、海に近く、川が多く、水とともに共生する暮らしがそこにはあった。

 

しかし、どこにも探しているものはなかった。

 

さすがに、観光目的で来たわけではない。徐福はあせった。

せめて、黄金だけでも持ち帰らなければ。

 

徐福たちは各地を船で転々としながら、めざす黄金の場所を探し求めた。

そして、ある岬にたどり着いた。

 

徐福たちが上陸し、歩いていくと、村人らしい一人の男に出会った。

その男に笑顔で話しかけたが、例によって、言葉が通じなかった。
男は、徐福たちを不審そうにじろじろ見た。

徐福は、銀貨を取り出して、男の手に握らせた。

親愛の印と理解したのか、男はにっこり笑って、徐福たちに着いてくるように手招きした。

 

男は山道に入り、うっそうとした森の中をずんずんと歩いていった。

徐福らも、男を見失うまいと必死に着いていった。

やがて、森の切れ目が見え、誇らしげに男は徐福らに、その先に進むように指を指し示した。

 

徐福らが向かった先に広がる景色は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたり一面の、

 

 

 

 

 

黄金色に輝く、

 

 

 

 

 

稲穂の姿だった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、金色の野じゃ!」

 

「まばゆい光にあふれておる!」

 

「まさに黄金の国じゃ!」

 

口ぐちに叫ぶ仲間たちの声を聞きながら、徐福は、黄金の国の意味を悟った。

 

そして、がっくりとひざをついた。

 

 

「確かに、ここは黄金の国じゃ。

ただし、黄金の正体は、

金ではなく、
稲穂だったのじゃ。

ここには、陛下の求めているものは何もないかもしれぬ。

何を持ち帰ろうが、陛下の怒りに触れるだけじゃ。

 

じゃが、稲を収穫している人々の、なんと朗らかな微笑みであろう。

わが国の民は、貧しさに苦しみ、重税に苦しみ、あのように笑っているものなどおらぬ。

そう考えれば、

ここはまさに黄金の国じゃ。

天国じゃ。

 

わしも、残る余生をこの国でまっとうしよう。
民が幸せに暮らす、奇跡のような、この国で。」

 

そう思い直すと、徐福は、その村の長に面会し、貢物を渡し、この村に定住を申し入れた。

村長は、にこにこと笑顔で徐福の申し出を受け入れた。

 

徐福たちは村の一員となり、持って来た船を使い、近隣の村や町と交易し、その富を村に持ち帰

り、大いに村を発展させた。

やがて、村長が亡くなると、徐福は村人全員に推されて、新たな村長となった。

そして、毎年、秋の収穫の時期になると、新たにとれた稲穂を束ね、俵を作り、近くの岩山の頂上に祭壇を設けて、神にお供えした。

お祀りした神は、村人たちが信仰する太陽神であったが、

徐福は、心の中でそっと、

自分をこの地に派遣してくれた始皇帝のことを思いながら、

感謝の祈りを捧げるのだった。

 

 

どっとはらい

 

 

 

よっくる(o^^o)

 

 

 

(絵は植松宏子さん)