
(写真は秋山紗智子さんです)
【神様の釣り堀】
神様の釣り堀で、
今日も神様は
釣り糸を垂れる。
釣り糸には神様のご馳走が
結わえてある。
釣り堀に糸を垂れると
ご馳走は、
少しずつ水の中に散っていく。
それに気づくも気づかぬも
魚次第。
そのご馳走にありつけるも
ありつけぬも
魚次第。
神様の釣り糸には
釣り針がない。
誰も
痛い思いをして、
釣り上げられることはない。
神様は
ただ、
ご馳走を食べさせたいと思って、
釣り糸を垂れるだけ。
それなのに、
自分たちが作った釣り針で
お互いを傷つけ合う魚たちを
神様は悲しそうに見ている。
やがて、
進化した魚たちは
爆弾を投げ合うようになり、
多くの魚たちが死に、
神様の釣り堀に浮かぶ。
神様は
その亡骸をすべて
すくい取り、
魔法のまじないで
蘇らせる。
蘇った魚たちは
天使になり、
神様に寄り添う。
「見てごらん。
あれが地上にいたときの
あなたたちの姿だ。
私の与えたご馳走に
目もくれずに、
お互いを傷つけあっている。
もう、こんなことは
終わりにしなければ。」
天使たちは驚いて、
「神様、釣り堀の水を抜いてしまうのですか?」
と聞くと、
「この釣り堀で
あなたたちが学ぶことが
なくなれば、
そうする。
同じ事を繰り返しても、
これ以上の成長が望めぬなら、
みな一度、
天使に返して、
釣り堀を新たに創ろう。
それが今なのか、
しばらくあとなのか。
決めるのは、
あなたがたであり、
水の中に住む魚たちだ。」
天使たちは神様の言葉の重さを受けとめ、どうすればいいか話し合いました。
そして、あるものは、神様の思いを伝えに、魚になって、釣り堀に飛び込みました。
また、あるものは、たくさんの魚たちが死ぬのに備え、神様のもとに控えました。
それぞれの天使たちが自分の役割に目覚め、行動に移すことにより、奇跡が起こり始めました。
釣り堀の中の魚たちが神様の存在に気づき始めたのです。
釣り堀の中での争いは、だんだんなくなっていきました。
せまい釣り堀の中でものを奪い合う愚かさにみな気づいたのです。
争いは終わりましたが、釣り堀の水は重く濁っていました。
今までの魚たちの争いの積み重ねが水を濁らせたのです。
その水は、魚たちにとって暮らしにくいものでした。
魚たちは、神様に水を浄化してもらえるように祈りました。
みなが一つになり、祈ることにより、また、奇跡が起きました。
水の濁りが少しずつ浄化されていったのです。
やがて、釣り堀の水は、もとの澄み切った水に戻りました。
神様は喜び、魚たちにこう告げました。
「聞け、我が子らよ。
あなたがたが争っている間、水は、にごり、暮らしにくかっただろう。
でも、それは、私がそうしたのではない。
あなたがたがそうしたのだ。
この水は、あなたがたの行いの結果を映しだす魔法の水。
あなたがたがなかよく住めば、
水は澄み、
あなたがたが争えば、
水はにごる。
水がにごりつづければ、
みな死滅する。
私はそれを見るに忍びなくて、
釣り堀のせんを抜き、水を空っぽにして、新しい水を注ぐこともある。
でも、そうすれば、みな、一度は死を迎える。
今回は、みなが悔い改めた奇跡によって、水が浄化された。
あなたがたがあなたがた自身を救ったのだ。
私はこの釣り堀を特別な釣り堀と誇らしく思う。
さあ、次は、この釣り堀を出て、
他にもあるたくさんの釣り堀のどれかを選んで行きなさい。
あなたがたの叡智で、その釣り堀を輝かせなさい。」
魚たちは、喜び勇んで、釣り堀を飛び出すと、新たな釣り堀を探しに出かけていきました。
その釣り堀の名は、
地球
と言います。
どっとはらい。
よっくる(^-^)/