★第二話 草原が燃えちゃう!

エルフィ・リトルは、おともにドラド公爵を連れて、大きな草原にやってきた。

ここなら、どんな魔法を使っても、ママに叱られないだろう。

この草原で、思い切り、魔法の練習をするつもりなのだ。

「さあ、いくわよ! せんぷうき!」

どこからともなく、風が巻き起こり、草原の草をなびかせる。

「次! せんたっき!」

どこからともなく、水が現れ、草原をぬらす。

「まだまだね。次、こんろー!」

小さな炎が草を燃やす…、はずが、草が濡れていて、火がつかない。

「主よ、この魔法は家で使わぬことだ。大事な家が燃えてしまうぞ。」

と、公爵が忠告した。

「わかってるわよ。次、ひらいしーん!」

雷が空から近くに落ち、エルフィは耳をふさぎ、倒れこんだ。

「ふわあ、雷こわい、雷こわい」

体をぶるぶるふるわせるエルフィ。

公爵は、鼻くそを指でほじりながら、

「雷がいやなら、そう言えばいいのに」

とつぶやいた。

「私が雷きらいなの、知ってるくせに!」

と怒るエルフィ。

公爵は、知らんぷりをしていた。

・・・

遠くでときの声が聞こえる。

人々が争う音。

エルフの里には無縁なもの。

それが、次元の壁を越えて、波動として伝わってくる。

「今、別の次元のこの場所で、合戦が行われているようですよ。拙は見物に行きたいのですが、いけませんかね?」

公爵がそう言うと、エルフィは
じろっとにらんで、

「行くなら、一人で行ってちょうだい!」

と言った。

「やれやれ、それができれば、そうしているのですがね、私の雇い主との契約違反になるので、できないのですよ。
私はあなたの見守り人なのですからね。」

と公爵。

エルフィは、

「いっつもつきまとわれて、うっとおしいったら、ありゃしない。一度、あなたの雇い主にお会いして、丁重にお断りしたいもんだわ。私はもうじゅうぶんに大きくなりましたから、子守りはもういりませんって。」

と、嫌味を言ったが、公爵は意に介さず、

「子守りではないのですがねえ」

と肩をすくめた。

合戦の声は、まだ続いている。

エルフィの長い耳に、

「助けて…。助けて…。」

と、かすかな祈りの声が聞こえてきた。

どこからか、草が燃える匂いが流れてくる。

「誰か、女の人が助けを呼んでるわ!」

エルフィがそう言うと、公爵も、

「どうやら、火攻めにあってるようですな。」

と応じた。

「大変!早く助けなくちゃ!なんかいい魔法ないの?」

とエルフィが聞くと、

「風向きを変えると、あるいは…」

と公爵。

「それよ、それ!早くして‼」

「先に呪文をとなえて頂かないと…」

エルフィは、ぽんっと手を打って、

「あ、そうだった。えーと、えーと…。かざぐるまー‼」

と呪文をとなえた。

すると、次元の壁を越えて、風が吹き、別次元で草原を燃やしていた火の向きを変えてしまった。

「あわてて、敵は退散していったようですよ。」

公爵がそう言うと、エルフィは、

「ああ、よかった。」

と胸をなでおろした。

エルフィの耳には、先ほどの女性の感謝の祈りが聞こえてくるのだった。

続く

よっくる