【アリとキリギリス ~スピリチュアルバージョン~】


ありとキリギリス

(絵:めぐっぺ)


アリとキリギリスは、イソップ物語の有名なお話。
いろんなバージョンがあるみたいだけど、今日はスピリチュアルバージョンでお届けします!

むかしむかし、あるところに
アリとキリギリスがいました。
真夏の暑い盛りに、アリたちは、わき目もふらずに働いていました。
キリギリスは、そんなアリたちを見て、言いました。
「こんなに暑いのに、どうしてそんなにあくせく働いてるんだい?
もっと日陰で涼んだらいいのに。」
アリたちは、言いました。
「夏はすぐに終わり、寒い冬がすぐにやって来ます。私たちは冬に備えるための食料をためておかないといけません。だから、今のうちから、食料集めに忙しいのです。」
キリギリスは感心して、
「そっかあ、君たちは働き者だねえ。じゃあ、僕は邪魔にならないように、その草陰で涼んでいよう。」
と言って、草陰で寝転がって、すやすや寝てしまいました。
アリたちは、気にもとめずに、せっせと働き続けました。

やがて、夏が過ぎ、すぐに冬がやって来ました。
あたりを木枯らしが吹きすさびます。
キリギリスは、外套の襟を立てながら、食料を探して、さ迷っていました。でも、なかなか見つかりません。
「ああ、このままでは僕は、野垂れ死してしまう。食料の豊富な夏のうちにもっと働いておくんだった。」
しかし、後悔しても、後の祭りなのでした。

キリギリスが、ある家の前を通りがかると、そこはアリたちの家でした。アリたちが夏にためた食料を食べながら、話をしています。
キリギリスは、思わず扉を開けて、アリに助けを求めました。
「すみません、アリさん、私に食料を分けてもらえませんか?寒さと空腹でもう死にそうです。」
アリたちは、キリギリスがかわいそうになり、食料をわけてやりました。
なんとか人心地ついたキリギリスは、アリたちに感謝して、
「ありがとう、アリさんたち。よくぞ、僕を見捨てないでいてくれたね。」
と言うと、
アリたちは、
「私たちは食料を十分に蓄えました。余っている食料を困った人に分かち合うのは、当たり前ではないですか?」
「そうそう、困った人に喜んでもらえるのが私たちの喜びなのです」
「キリギリスさん、あなたは私たちが夏につらい労働に明け暮れている時に、癒しの音楽をかなでて下さいました。あのおかげで、私たちは元気を取り戻すことができたんです。あの時のお礼を今日、することができて、私たちもうれしいです。」
と、口々に言いました。
キリギリスは、驚いて、
「私にとって音楽は空気を吸うようなもの。それをこんなに喜んでくれるなんて、芸は身を助くって、このことだな。」
と思いました。
キリギリスが、
「じゃあ、お礼に一曲弾かせてもらっていいかな?」
と聞くと、アリたちは喜んで、拍手喝采しました。
「実は、冬の生活が、あまりにも退屈で、死にそうだったんです。どうか、冬の間中、私たちの家に、いてください。
あなたは飢えを凌げるし、私たちは退屈から救われる。いいことづくめです!」
こうして、キリギリスは冬の間中、飢えることもなく、アリたちに音楽を聞かせて、楽しく過ごしましたとさ。

みんな、ちがって、

みんな、いい。

よっくる