小さな横長の
明かり取りみたいなのがある
一番左
屏風折りの山折りがない
あそこが
夢の扉だ。
ぶうにゃんが
颯爽と出入りなさる。
あの扉が開くと
観客は
ソワソワし始める。
そして
無情に閉まると
夢から醒めなければ…
と寂しさが漂う。
扉の向こうの
小さな影は
奥様だろう。
一目散に
小さな影に向かう
ぶうにゃん。
今回は
ファン歴の浅い私の
初めての夜の公演だった。
天賦の才を持つ
ぶうにゃんが出入りする
このドアではない
客席後方のドアは
アンコール終了まで
客席に座る事を
諦めねばならなかった
数人の方が
出入りしていた。
残念な気持ちで
ドアを出る瞬間
もう一度会場を見る人もいた。
幸い私は
最後まで席に座って
演奏を聴くことができた。
当日は
予報通り
帰り道は小雨が
降っていた。
寒いというほどの
陽気ではなかったけど
途中で席を立った人は
身を縮めながら
小走りに駅に向かったんだろう。
電車に乗ってからも
心はホールに
置いていきたかったろうな。
幾つかある
会場の扉は
これまでも
沢山の悲喜交々を
見てきたんだろうなあ。
都会は
音楽ホールの数が多い
演奏者も拠点は
お江戸が多いだろう
だからか
演奏会も多い
そんな場所に
私如き田舎者がお邪魔すると
電車の乗り換えに
四苦八苦し
その乗り換えの為に
長い長い距離を歩き
地の底に向かうかのような
エスカレーターに
身を預ける。
今回
私は一泊して
翌早朝の新幹線で
田舎町に戻り
直ぐにエプロンを付ける
日常に戻った。
その日常には無い
音楽や歌劇などの
芸術がある生活を
ちょびっと
羨ましく思った。
銀座の文具店で
素敵なカードと
葉書を買った。
来年のお誕生日に
バースデーカードを
書く日のために…。
