あの…
あの……

天才ピアニストぶうにゃんが
私が生まれたこの
小さな小さな
港町にお越しになる。


こんな日が
本当に来るなんて
願う事はあっても
実現することはないと
心底思っていた。



この日の為に
早出 残業
休日勤務も
文句一つ言わず
粛々とこなしてきた。

晴れて
今日は午前中のみ
お仕事を頑張れば
午後はお休みにしてもらえた。



こんなこともあろうかと
先日
田舎町の会場らしく
なんの規制もされない日に
控室と思しき
練習室の場所を確認した。

なんと
電車のホームから
丸見えでびっくりした。



チキンハートの私が
コンサート終了後
あの場所に行って
サインをいただきたい
ファンの皆さんの
大行列に並べるかどうか
甚だ心許ないけれど
大きな会場ではなく
私のホームグラウンドなのだ。


いっちょ
死ぬ気でやってみよう!
と思っていた。


しかし
ぶうにゃんは
病み上がりなのである。


人との距離は
なるべく取りたいだろう。


次のチャンスは
無いかもしれないけど
今回は
大人しく帰ろうと
思う。


あードキドキが
ドッキドッキになり
ドッキンドッキンに
なっている。


救◯を飲んでおこうか
宇津救命丸にしとこうか。



時計の針の動きが
やけに遅い。