
未だセーラー服を着ていた頃
手の綺麗な人が
好きだった。
その頃は
美しい手といえば
テニスのラケットを
持っていない方の手や
難しそうな本を読む人の
白くてしなやかな手で
ブラスバンド部の人達には
目がいかなかった気がする。
今なら
サックスやトランペットを
操る手の美しさや
ドラムセットを思いのままに
叩く細やかな動きに
思わず見とれただろう。
ただ、
初めてぶうにゃんを見た時
スラリとした姿に
さもありなん!という
白魚の如く高貴で
バレリーナの如く
無駄無く動く手に
目を奪われた。
こ〜んなに綺麗な手の男性
見たことない!
と、思った。
少し筋張っていて
機械仕掛けのようなのに
ピアノの音だけが響いて
指先が鍵盤を叩く音は
聞こえてこない。
勿論テレビからの音だし
壊滅的な聴力しかないから
解らなかっただけかもしれないけど
小学生の時
お誕生日会にお呼ばれして
初めて聴いたピアノは
弾くんじゃなくて
叩くんだ…と
教えてくれたお友達の
お顔と一緒に
カツカツという小さな音がしたことも
記憶に刻まれた。
我が敬愛してやまない
美男子ピアニストぶうにゃんは
はしたない音が似合わない。
私のように
年中ドタバタせず
電車に乗り遅れそうでも
お鍋の煮物が吹きこぼれそうでも
止事無く
極めて優雅に対処なさるんだろう。
同じ空間に存在する可能性の
なんと低いことか。
ぶうにゃんの心地よい音の世界に
極めて無粋な私の生活音は
間違いなく騒音でしかない。
又それを
笑って許して頂けるとは
到底思えない。
世界が違うというか
次元が違うというか
やはり
私の場所から
遠く仰ぎ見る
尊いピアニストだなあ。
おーい
おーーい
ぶうにゃん
今年も
私が住む下界に
降りてきて
ピアノを聴かせてね。