眉と目の間が開き
視線がヒンヤリしているせいか
とても厳しいお顔に見える。


眼鏡も反論を許さない
学者のようで
こんな人に
真正面に立たれたら
自分が何をしたくて
何を言おうとしていたか
総て宇宙の果てまで
飛んでゆく。


棋士なみに
十手先、百手先まで
見通されそうだ。


その上
言いたいことが纏まらず
話の順序も目茶苦茶で
ただでさえ
滑舌が怪しく
起承転結もまったくない私。


こんな素敵なヘビなら
是非とも睨まれてみたいものだが
カエルである私は
オタマジャクシから
孵化できそうもない。



揃えた右手の
小指だけずらすところも
キッと結んだ唇も
視線を外さない強い目力も
遠きに在りて思う方が
良さそうだ。


こんな人とは
夫婦喧嘩できないなあ。

会社の上司でも
失態など認めてもらえないだろう。


やっぱり
一段下がった観客席から
遠く望む憧れのピアニストが
一番いいなあ。


尤もそれ以外になれる確率は
この世の数字では表せないけど。


ただ
この厳しく険しいお顔に
可愛らしいクレリックシャツは
なんとも言えない。


だから
好きなんだけど。


些か病的な症状を発症してから
2年半が過ぎた。


特効薬は疎か
漢方薬も無いから
初期から変わらずにいる。
恋の病、恐るべし…



今年もこうして
何の成長もなく
生きてゆくのだろうか?



お館様
申し訳ないっ。


こんな筈じゃあ無かったよね。
 
私だって
こんな筈じゃなかったもん。