どう考えても
この御仁は
高笑いなんぞというものには
ご縁がなさそうなんである。
がはははは…なんてとんでもない
あはははは
でさえも怪しい。
むふふふ
とか
くくくくく
とか
そんな含み笑いのような
笑い声ではなかろうか。
所作にしても
はしたなく小走りするなんて
とてもじゃないが想像に余りある。
おっとりと
慌てず騒がず
やんごとなく
お過ごしであろう。
我が家では
誰かが動く度に
けたたましい音と
極めて騒がしい声が響く。
ピアノの
優しく儚い音は
かき消えてしまう。
作業台にぶつかり
御館様に向かって
「ねえ、聞こえてる?」
と喚き散らし
包丁を気忙しなく動かす。
ぶうにゃんは
お料理も嗜まれるらしいが
時間との勝負である
パスタや蕎麦などの麺類より
じっくりことこと煮込むお料理を
好まれるのではないか…と
要らぬお世話で想像する。
お作法も極々上品で
カレーうどんなぞ召し上がったとて
お洋服にカレーが飛ぶなんて
万に一つの可能性も無かろう。
これを以てして
住む世界が違うというのだろう。
私が住む世界の
なんと騒々しく下世話なことか。
生まれ変わったとて
私とぶうにゃんの世界は
決して交わることはなく
覗き見ることもできないほど
かけ離れているんだろうなあ。
それでも
生まれ変わって
又ぶうにゃんが
ピアニストになっていてくれたら
又こうして恋をしたいな。
平和って素晴らしい。
