紳士たる要素を
総てお持ちでいらっしゃる。
目の前に
何があろうと
隣に誰が立とうと
臆することなく
背を伸ばし
目を逸らさず
堂々とそこに居るんだろうな。
それに引き換え
ほぼ第一印象で
私なんぞに
人生を賭けた
多少おっちょこちょいの
お館様は
逆立ちしてみても
紳士淑女が似合わない。
堅苦しいお席は
できる限りご遠慮したい。
子供達の結婚式には
身体中の我慢と努力と忍耐を
掻き集め
モーニングと黒留袖を着た
我々夫婦。
歩くことからお食事に至るまで
しゃっちょこばる…を
ものの見事に体現した。
挙げ句の果てには
3センテンス以上は
構造上無理だと言ったのに
来客の皆様に
お礼の言葉をもごもごと
必死の程で申し上げた。
そして…
末席から
高砂の席を見つめながら
始終ネクタイに締め付けられた
喉元に手をやるお館様と
トイレに行くくらいなら
飲み物は我慢しようと
いじらしい決意をした私は
半日のなんちゃって
紳士淑女に疲れ果てて
泣くことも忘れていた。
ぶうにゃんは
お召し物で
緊張したり
疲れたりは
なさらないのだろう。
そりゃあ
根っからの
ジェントルマンだからして
パジャマやスウェットより
燕尾服やタキシードの方が
自然に振る舞えるのかも。
奥様を育んだ町での
凱旋公演は
お二人で素敵なおしゃれを
楽しんだかしら?
ジェントルマンに似合いの
レディーだったんだろうなあ。
ベッドにひっくり返って
オヤツの入った箱を
向かいのお家の
デブんち猫みたいに
眺めまわす端ない我が身には
到底できない立ち居振る舞いだろう。
神様は
ちゃんと
立場や能力に見合った伴侶を
授けてくれるものだなあ。
